目立たない日常が欲しい【俺】の物語。サバゲかよ?
星明かりが綺麗だ。人里離れているところは星の光り方が違う。
「でもアストリアの星空の方が綺麗ね。」
伸びをしながら真綾が言った。まるで見たことでもあるかのように。
「見たことあるよ。マーヤさんの記憶でね。特に明け方のうっすらと白んで来た時の紫がかった空が素敵。あたしあの色大好き。」
そ、そう。⋯⋯それは俺もマーヤも好きだった景色だ。まだ寝静まっていたパーメンのそばを離れ、二人で見上げた夜明け直前の空。朝方のひんやりした空気。肩を寄せ合うと感じる互いの温もり。
でも、真綾との距離は少し離れている。手を伸ばせば触れることができるだろう。でもためらってしまうその距離。
夜風に紛れ生徒たちの嬌声が耳元に流れてくる。俺たちも出発しなくちゃ。
ところが建物の角を曲がると突然
生徒会長は
「この銃ホンモノ。あなたの友だち私たち捕まるいる。」
片言の日本語。俺はすぐにそいつらの言語に切り替える。彼らはハマちゃんとニッシーを人質に捉えたというのだ。お前らの話は信じられないな。当人たちに会わせろ。するとレシーバーを耳に当てろという。俺の言葉の意味がわからないのか?声を聞かせろではない。会わせろと言っているのだ。
こちらを子供だと思って舐めているのだろう。俺たちは引きずられるように軍用車に乗せられると米軍が管理しているエリアの富士演習場の方へ走り出す。中華連邦か。おそらく俺が原子力潜水艦を奪ったことへの報復、いや、返還を要求するつもりかもしれない。彼らが難なく海兵隊の基地付近まで侵入できたのは間違いなくアメリカとの話し合いがついていることを示唆する。
「ねえ、大丈夫なの?」
真綾は不安そうだ。だいたいこいつらよりもこの間学校で戦ったカルヴァドスの方が断然強いぞ。
「あの二人、無事かしら?」
心配する真綾の頭を撫でる。どうかな。女の子じゃないから俺は気が楽だけどね。しばらく行くと野草を刈り取り仮設の陣地になっているところに到着した。 とりあえず、真綾に指一本触れたら、自己の存在の消滅を叫び求めるほどの生き地獄に落としてやるんで安心してくれ。真綾は引きつったような笑顔でうなずく。
対人というよりは対戦車レベルの重火器を持った兵士たちに半包囲されていた。投光器で俺と真綾の周りが照らされる。そこに司令官らしき人物が現れた。
「大将はあんたかい?」
俺が中国語で問うとうなずく。俺は居丈高に言った。
「まず人質をここに連れて来い。そこからが交渉のスタートだ。」
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