目立たぬ日常が欲しい【俺】の物語。【俺】の物語。トニ先。
トニーは2m近い長身でイケメン。そして甘いボイス。すれ違う女性は必ず二度見するレベルだ。異世界で最初に俺たちがアストリア王に謁見した時、宮廷の面々はすべて彼こそが勇者だと勝手に思いこんだものだ。
うんうん。俺の影がますます薄まって結構なことである。ただ講師と言っても一般生徒を相手というよりVIPな勇者一行の授業が主だ。恐らく戦闘の訓練も担当しているのだろう。
「2Dの高山奏。美術準備室まで。」
昼休みに「ええ声」の校内放送で俺が呼び出しを受ける。トニーの声だ。呼び出されたのは俺のみだが当然、護衛の真綾も連れて行く。
美術準備室の前は「トニ先」の出待ち女子がたむろしており俺と真綾に羨望を超え呪いにも似た視線を浴びせかける。
「よう。大将元気か?」
おかげさまで。ボチボチやってますがな。それはいいけど相変わらずモテるなぁ。それと女子高生に手を出すと都の条例に引っかかるんで自己規制よろしくね。
「いや、さすがに子どもに手は出さんよ。俺はロリコンじゃないんでね。」
トニーは真綾に目をむけた。
「しかし、キミ、ほんとにマーヤとそっくりなんだな。マーヤがその
それはないない。逆にマーヤの名前をこちらからいただいたんでね。まったくの別存在だよ。で、なんの用事だっけ?
「俺はあの勇者たちに召喚された。だから今回はあの子らの面倒を少し見てやろうと思うんだ。おそらく戦闘術と召喚士のスキルを中心に見ることになるだろう。
それに、こんなところでお前に逢ったのも何かの引き合わせだ。たまには二人で飲みに行こうぜ。」
いや、俺はここでは高校生の設定だからな。付き合ってもいいが外でアルコールはNGだぞ。そう言えばアストリアの最近のニュースはどうだ?何か変わった事はないか?
「リュパートが……陛下が
そうか、やつが死んだか……ってまだ50前だよな?何があったんだよ?
「やつもお前を
俺は早死にした王に同情する気にはなれなかった。確証はないがマーヤを暗殺させた黒幕に違いないからだ。
「そしてリリアが女王になった。弟たちの中でいちばんふさわしい者に王位を譲るまでの繋ぎだそうだ。」
それはいらぬことを言ったな。確か弟王子は3人いたはずだ。有力貴族どもがそれぞれ神輿に担ぎ上げて内乱のタネにしかならんぞ。譲位なんぞ臭わすもんじゃない。
「それは俺もジャスティンも諫言したんだけどね。リリアが頑として聞かないんだよ。なあ、一度お前が帰って言ってやってくれないかな?」
それはできない相談だな。しかし、なんとなく嫌な予感がする話だった。
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