上位カーストな【私】の物語。「ヒントくらい出してあげなよ。」
華はわざとらしく奏に抱きつき、胸を押し当ててアピールしている。華はこちらをチラリと見ると少し笑った。ちょっとカンジ悪い。
そして、「ドラゴン」だ。こんなの初めて見た。ドラゴンと言っても顔は人間に近い。しかもでかい。
「なんだヤツか?」
奏が嫌そうな顔をして呟いた。
「ほう、お前はザムシャハークの。」
どうもお互いに旧知の仲のようだが。
奏の雰囲気が一変する。奏は華を離すと紗栄子に託しすぐ避難するよう告げた。じゃあ私もと踵を返した途端、奏が私の手を掴んだ。
「真綾はここにいてくれ。」
そんなの無理!あんな大きいのとなんて戦えるわけないでしょうよ。その時私の髪留めが「起動」した。機械ではないからその表現はおかしいのだけれど。
魔王カルヴァドス。水と風を操るテューポーン族の末裔。奏と同じ異世界だが隣にある別の大陸の魔族を支配する魔王。様々な情報がひっきりなしに私の脳内に流れ込む。どうすんの?ものすごく強いよ。
「カルヴァドス公。ここは貴公のいるべき世界では無い。帰られるがよかろう。」
奏は穏やかに言う。こんな恐ろしそうな姿の怪物に怯んだ様子は微塵も無い。
「ここはそちの領地かえ?」
怪物の問いに奏はさらに答える。
「この地の安堵をここの政府から請け負っている。」
「ではそちを喰らえばここは余の領地となろう。」
怪物から膨大な魔力が溢れ出る。空気がビリビリと震える。凶々しい、そんな描写がぴったりだ。
ところが、奏は右手を怪物に向けて伸ばすと手のひらから魔法を放つ。それは怪物に大きな穴を開ける。え、奏は見た目よりも強いの?しかし、怪物はみるみるうちに再生して元の姿に戻る。
「そのようなぬるい攻撃など効かぬわ。」
奏は怪物の言葉が終わらないうちに黙って二発目を放つ。再び怪物の頭部が吹き飛ばされ、再びもとに戻る。
「ぬるいと言っておろうが!」
今度は怪物がこちらに魔法を放つが奏の召喚した妖精王が張った結界を崩せない。うわ、今のすごく怖かった。思わず奏の背中に顔を埋めてしまう。
「真綾、心配しなくていい。絶対に君を守る。」
私は恐怖のあまりその背中にしがみついたままだった。ちょっとカッコいいけど、だったらあの時華たちと一緒に逃げさせてくれた方が良かった!あんたあの怪物よりも強いの?
「まあ、真の力を出せれば余裕なんだけどね。」
なにそのニートみたいな言い草!そこにリアム君たちが駆けつける。
「魔王、あの怪物に勝つためにはどんな勇者を召喚すれば良いのだ?」
リアム君の問いは英語だ。
「あほか。これ以上
奏の言い分ももっともだけど、教えてあげないとまたこんな怪物を呼び出されるよ。
「マジか⋯⋯。」
奏は心底いやそうに顔をしかめてから言った。
「錬成術師だ。」
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