島国に来た【勇者】の物語。助っ人勇者を呼んでみよう。

 私は魔王を舐めてかかっていた。一月ほどで片付けて夏には婚約者が待つロンドンへ向かうつもりでさえいた。しかし、実際には魔王は狡猾でしかも強力な組織を有しており、その長として堂々としていた。


 我々といえば代を重ねるたびに徐々に使える魔力の容量も魔法の強力さも減らしている。あの魔王に対抗するためには十分な魔力の供給源と、新たな魔法と装備、そして魔王軍に対抗できる組織が必要だ。


 当初、召喚できたのはゴブリンやオーク、と言った低級の魔物だった。知能が低く、主従どころかコミュニケーションすら取れない。まるで下等な有色人種カラードのようだ。


 ようやく、俺たちは神とコンタクトを取ることに成功した。下級の天使の召喚に成功したのだ。あの魔王のパーティーを転生させたのはその者が使えている神だと言う。

「ああ、あの子だったのね。高山奏は魔王ザムシャハークの力と眷属を手中におさめて解決した案件よ。監視はしているけど、民衆に何か酷いことをしているわけではないわ。」


天使に我らにより強大な力を授けるよう命じたが天使は首を横に振った。

「あら、為政者と職業軍人、金持ちと宗教家は民衆のうちに入らないので脚下よ。それに皆さんは勇者としてはすでに優秀よ。これ以上高めることは難しいわね。」


 そう、これ以上の力を望むなら「異世界への転生」が必要であり、それは我々にとっては「死」を意味するのだ。もちろん、それはこちらがお断りだ。


  「そうね。高山奏は魔王の力を吸収した上に自力で次元跳躍も果たしているわね。すでに魔神レベルになっているわね。これではあなた方だけでは難しいわね。じゃあ勇者を召喚させましょうか?」


 しかし、それでは使い物にならない。というのも赤子として「転生」した勇者が目覚めるまで15年はかかると言われたからだ。いくら俺たちだってそんなには待てない。そう、「転移」させるしかないのだ。


 「いいでしょう。あなた方に転移の力を与えましょう。ただ、相手を従わせられるかどうかはあなた方次第よ。あまり無茶なものを召喚すると、次はあなた方の転生先を私が探すことになるから注意してくださいね。」


 「どうするリアム?」

ノアが俺の覚悟を尋ねる。覚悟はとうにできている。

「最強の勇者を呼んでやる。」


そして、術式を施した後、魔法陣から姿を現したのは黄金のドラゴンだった。

獅子のような頭と鷲のような一対の翼を持ち、逞しい人間のような上半身、下半身は7つの蛇の尾に分かれていた。うむ、強そうではないか。


 

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