上位カーストな【私】の物語。「平和がいちばん!」
昨日からお屋敷の厨房は戦争状態さながらだった。異世界からも応援が来ていたみたい。理由は勇者のバーベキューに「差し入れ」をするためだった。うん、案外奏も気が利くところがあるのね。私は休暇中だったので手伝いは免除だった。
バーベキュー参加者は全校生徒の半分くらいだった。生徒だけでも1200人くらいはいるはずだから軽く見ても600人か。なかなかの壮観だった。私が休暇のため奏の護衛役も執事のコーデルさんが自らついていた。そりゃ勇者が相手だもの。
でもとても素敵なバーベキューだった。肉が大きくてびっくり。でも低音でじっくりと焼き上げてるから中はほろほろと肉が解けるくらい柔らかい。脂身が少ないからお肉感がすごい。
ノア君やステラちゃんは良い顔でみんなの相手をしていたが、リアム君だけがむすっとしていた。肉が盛られたトレイを前に一向に食が進まない感じ。最近、メイドをやっているせいか食べている人間の様子を観察する癖がついてしまった。職業病かしら。
そこにクロエさんが近づく。
「今日は魔王に一本取られたようだな、リアム。」
リアム君はムスッとした表情を崩さない。クロエさんはリアムの二の腕を軽く叩いて言った。
「ステラがはしゃぎすぎて結界を張り忘れたからな。まあこんなこともあるさ。たまには肩の力を抜いたらどうだリアム。肉もなかなか良い焼け具合だぞ。」
ステラも近く。
「ごめんねリアムぅ。学校じゃないことをうっかりしてたの。
ステラはビーフと野菜を巻いたタコスをリアムに差し出す。
「ふん。魔王の眷属が焼いたタコスなど何が入っているかわからん。」
そう、今回は奏の不戦勝だったのだ。奏は横田基地と屋敷の間に
よって、本当は魔王に戦いを挑むはずだった勇者たちの当てが外れてしまったのだ。
「俺だってできれば戦いたくはないんだ。みんなが平和に暮らせるならそれがいちばん。」
奏はテーブルに頬杖をついたまま呟く。その視線の先は楽しそうにバーベキューに興じる生徒たちだ。うんうん、平和がいちばん。
「ええ、そのためにはこの世界でも魔王を頂点とした裏の秩序の構築が不可欠でございます。」
は?コーデルさん今さらっと怖いこと言ったでしょ?
「まあね。平和というのは⋯⋯、いやここで無粋なことを言うのはやめておこう。セバスチャン、そろそろ食後のお茶といこうじゃないか。」
奏の指示で再び転送陣からメイドさんたちが現れると一斉に作業を始めた。
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