下位カーストな【俺】の物語。 「再戦への招待」。
ミッション・コンプリート。モニターに表示される。一仕事終えた後のコーラは格別だ。
「なにゲームしたくらいで働いた感出してんのよ。ちょっとこっちに付き合ってよ。」
華が俺の手をひいてサロンへと連れていく。入ると女の子な光景が待っていた。いやいや女の子は華やかでいいわ。
「旦那様、ケーキはいかがですか?」
ありがとう。サナがケーキとコーヒーを給仕してくれる。
「ねえ、どうして真綾を住み込みで雇ったの?」
紗栄子と華に真綾との「馴れ初め」を聞かれる。おそらく真綾の話と答え合わせをするつもりなのか。ただ、それは俺たちも想定済みで、俺は真綾を庇って長期「入院」していたことになっているのだ。だいいち、正直に異世界の話をしたところで頭がオカシイと思われるだけだ。
「それで、奏君は真綾のことどう思ってんの?俺が助けてやったんだから俺と付き合えよ、とかならないの?」
ならんな。それが許されるのはイケメンだけだ。それに真綾をメイドにしてしまったことで、すでに助けた恩義というのはチャラになってしまった。なにしろ真綾の将来の選択肢を潰してしまったも同然だからだ。
「ふーん。じゃあ奏くんは現在フリーなんだね。私が彼女になってあげよっか?」
なんでやねん。華さんそれどういう思考回路何ですか?
「ねえ、私なんかどう?」
へ、紗栄子さんまで?どうなってるの?俺は恐る恐る真綾の表情を窺うと彼女はすました顔でコーヒーを飲んでいる。いったいこれまでに何があったのか。
いやいや今のところ俺に恋愛する気が無いんだよね。その、なんていうか⋯⋯。とても妻を殺されましたなんて言えない。その失意からまだ完全には立ち直れてないなんて言えない。まだ愛する人を失う怖さを乗り越えることができていないなんて言えない。
おれが狼狽えていると全員のスマホから着信音がする。皆、とりあえずメールを確認する。いつもはチェックをめんどくさがる俺は救いの手とばかりにチェックした。それは、リアムたちから生徒全員に対するバーベキューへの招待状であった。
「すごいね。さっすが大富豪。全校生徒呼べちゃうんだ。真綾も行く?」
紗栄子の問いに真綾は顎で俺を指した。雇い主に聞け、ってことね。
この企画には間違いなく陰謀がある。横田基地という広く、そして日本政府の介入を一切拒める空間。その時、セバスチャンがサロンに入ってきた。
「旦那様。勇者側から招待状が届いております。」
すげえ。蠟で封印されてる書状なんて異世界以来だ。セバスチャンが開封して俺に手渡す。
それにはバーベキューへの招待と再戦の挑戦状、そして俺が来なければ級友たちの命は保証しないという脅し文句が入っていた。おいおい、どっちが魔王なんだよ!?
紗栄子も華も、そして陰キャたちも行く気満々。これは逃げられそうもない。俺は腹を括った。
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