上位カーストな【私】の物語。GWの『映える』過ごし方。

「ねえ、私たちも泊まりに行っていい?」

紗栄子と華から打診された。奏と仲が良いキモヲタ4人組が和館に泊まる予定は知っていたが。「も」ということはやつらから話を聞きつけたのか。


 いやいや、客は私のせまーい部屋にしか泊まれませんよ。なにしろ私こう見えても「使用人」なので。椿姫さんに頼めば宿直室に泊まれる許可が降りるかもしれませんけど。


 「ええっ。」

そんなガッカリした顔しないでよ。でも裏技が無いわけでもない。そう、私ではなく客になればいいのだ。


 二人は奏に交渉しに行く。奏はOKを出したようだ。

「真綾も二人と一緒の部屋にに泊まりたいんだよね?」

奏は私にも気を遣ってくれた。うん、できればお願いします。

「じゃあ真綾もその日は休みにすればいいよ。当日は俺の客、ってことで。」

やった!ありがとう。でも洋館に部外者は泊まれない、という規則があるんだよね。と言っても関係者が奏しかいないのだけど。

「俺たちも和館の一階の和室を使う予定だったけど、一応、椿姫とセバスチャンに聞いてみるわ。」

 そして、許可が出る。やった!ただ、奏が許可した人間に限る、とのことだった。そりゃそうよね。そして、私たちが西側の茶室に泊まることになった。奏たち男子だと貴重なモノを壊しかねない、という懸念からだ。


 当日は男子たちには淫魔のマナ・カナが、女子にはナナ・サナがつくことになった。男子たちは洋館の階段広間でゲーム大会のようだ。一方、私たちは近くのサロンでおしゃべりをする。


 ブラウニー&ホイットニーの作ったケーキはとても綺麗で美味しいのだ。紗栄子も華もテンションが上がる。

「ねえ、これ撮ってインスタ上げても良いかな?」

ダメだって。なんかすごいリッチな気分になる。恋話に花を咲かせていると、急に華が真面目そうな表情で聞いてくる。

「そういえば真綾は奏くんと付き合っているんじゃないの?」


あーないない。ないです。これまでそんな余裕なかったんで。

「これまでってことは将来はある、ってこと?」

紗栄子が畳み掛ける。さあ、人生なんてどうなるか分かったもんじゃないしね。そう、いきなり事故で死んだり、突然異世界から帰ってきたり、魔王の屋敷に売り飛ばされたり⋯⋯恋愛?なにそれ美味しいの?って感じ。


「じゃあ、あたし狙っちゃおうかなぁ。奏くんのこと。」

華がにやっとする。はい?本気ですか?

「私も立候補すっかなあ。」

 紗栄子も私の顔を見る。いやいや、それって私をけしかけているつもりなの?

「とりあえず、奏くんとお喋りしよう。あたし、呼んでくるよ。」

華がサロンを出た。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る