陰キャ転入生な【俺】の物語。最初の対決。
勇者たちとの最初の対決はゴールデンウイークの直前だった。校庭のメンテナンスのため部活動の中止がアナウンスされる。にわかに出来た時間に皆ウキウキして放課後の相談を始めた。うーむ。たまにはファストフードを食べたいな。ムッシュの味も栄養バランスも整った料理になんの不満もないが、たまにはね。
しかし、教室に突如現れたのはロックフォード家の執事さんだった。確かウインチェスター氏。穏やかそうだが明らかにこちらを威圧しようとする目。おそらく数々の修羅場をくぐってきたはずだ。
彼はその手の白い木綿の手袋を脱ぐと俺の足下に投げつけた。なんとまあ古式ゆかしい決闘の申し込みである。思わず一連の所作に見惚れていたら
「拾われよ。」
と急かされてしまった。
俺がそれを拾うと、彼はくるりと背を向け、ついて来いとばかりに歩き出す。不意に真綾が俺に話しかけた。
「ねえ、奏。紗栄と華がカラオケ行かないか、って誘われたんだけど、行く?」
いいよ。後で迎えに行くから場所だけ教えておいて。それだけ言い残すと俺は執事の後を追う。校庭にはすでに結界が張ってあった。
結界を張る分自分の魔力を消費するのだが、自分たちが苦手とする魔法も防げるので判断としては悪くないだろう。俺は勇者時代は土属性系統の魔法で味方の援護を主に担当していた。
知ってか知らずか、地面にも封印に近い結界が施されていた。足下からの攻撃は嫌なのだろう。
「よく逃げなかったな。」
リアムが大上段に言う。逃げてもよかったのかよ。リアムの詠唱が始まる、俺とは違う異世界の術式。ただ彼のパーティのステータスが飛躍的に向上するのを感じる。
「
ノア・ミリガンの手から白銀の鎖が迸り俺の身体に巻きついて拘束する。その刹那、
「
クロエが目にも止まらぬ速さで迫り、ダガーで俺の首筋に斬りつける。長年パーティを組んでいたかのような見事な連携だ。俺は転移で拘束を離脱、剣を抜こうと思ったが、それは
健介の結界が懐かしい。エリスの援護射撃もだ。トニーの大剣も、ジャスティンの攻撃魔法も。
お互いがアイデアを出し合い、一致団結してその戦法を具現化する快感。きっと今あい
そして、俺の前でいつも大きな盾と剣を構え、守ってくれたマーヤ⋯⋯。キミさえいてくれたら!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます