陰キャ転入生な【俺】の物語。ルールはルール。


SNSで真綾に帰りますよのメッセージを送ったが既読がつかない。

「おいおい真綾さん、職務怠慢だなあ。」


 昇降口まで迎えに行くと、なんのことはない、上級生に絡まれていたのだ。


「どうせ安時給のバイトなんだろ?休んじゃえよ。俺がいいバイト紹介してやんよ。⋯⋯俺の【ぴー】をしゃぶったら時給1万円やるぜ。」

上級生のたちの悪い冗談。その時、真綾の手が一閃して上級生に平手打ちを食らわせた。

「何しやがる!俺を誰だと思っているんだ。俺の親父は最大民主党の国会議員なんだぞ!」

 杉尾クンの父親は元アナウンサーで、選挙のたびに野合と分裂と党名変更を繰り返しなぜか30人も議員がいるのに国民からの支持率は1%未満の野党議員のようだ。


 最近の国会で俺に関する支出でうるさいあの議員の息子だったか。少し涙目になっている真綾を見かねて俺が前に進み出た。

かなで!」

真綾は俺の後ろに回る。

「誰だ、てめえは?」

考えてみれば「モブ」感たっぷりな男がいきなり現れ面食らったようだ。

「ええと、彼女の雇い主です。」

俺の答えに取り巻きがツッコミをいれる。

「ああ、こいつが例の猛獣じゃね?」


 ナイス!俺は素晴らしいツッコミに「いいね」したい欲求をこらえながら、一礼すると真綾の手を取りそこから歩き始めた。


「ちょ、待てよ。」

杉尾センパイは「サ●ドの伊達さん」をフォアグラ農場で1年かけて肥育したみたいな顔で「キム●ク」風のセリフを言った。

「はい?」

ここは「I棒」の右京さんのイントネーションで返すしかなかった。


彼はそのまま俺の襟首を締め上げ持ち上げる。

「この学校ではな、この俺が王様なんだ。それが、この学校のルールなんだよ。わかったか?このクソが。」

「なぜですか?」

「それはこの俺様が最強だからだ。俺には腕力と政治力がある。わかったか?ルールはルールだ。」

俺は無言でセンパイの頭のてっぺんに手を置いた。

「てめえ、何しやがる。」

 センパイは俺を地面に叩きつけようとしたので、軽い電撃魔法スタンガンを見舞うとあっけなく手を離し尻餅をつく。


 その時センパイの山吹色に染められた髪の毛がバサバサっと地面に落ちた。

「杉やん、頭が⋯⋯。」

最初はあっけにとられていた取り巻きたちが笑い出す。

「?」

 不思議に思ったセンパイが頭に手をやると頭頂部から前の頭髪は根こそぎ抜け落ち、不毛の荒野⋯⋯もとい頭皮が広がっていた。俺は笑いをこらえながら告げた。


「センパイ、あなたの頭皮の寿命を100年ほどいただきました。もう一生生えてきませんよ。」


「どうなるんだ?俺はどうなるんだ?」

目を白黒させ口角泡を吹いてセンパイが俺に詰め寄る。

「俺と真綾に今後一切関わらないでください。そうすれば卒業する時に髪の毛を返してあげますよ。約束しますよ。」


まあ金持ちなのでそれまでの期間は精巧なカツラくらい作れるだろう。

「約束を破ったらあなたの頭皮の寿命を『柔らか銀行』の会長さんに売っちゃいますから。きっと。億単位で買ってくれるはずですからね。」

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