陽キャ転入生な【私】の物語。「ちょ⋯⋯仕事中だから。」
晩餐会が始まる。ムッシュさんの料理は異世界直送の新鮮素材を使ったものが多い。アストリアは海に面した国なので割とイタリアンに近いかもしれない。奏の口に合わせる、というのがムッシュさんの指針なので、きっとみんなの口にも合うのだろう。
「ねえ真綾、これなんの肉?」
紗栄子に聞かれる。そういえば異世界の牛なんて見たことない。
「牛⋯⋯でございます。」
椿姫さんがすぐに答える。語尾を濁すとは、きっと牛の形をしたナニかなのね。
コース料理は無事にデザートで締めくくられる。作ったのはスティルルームメイドのブラウニーとホイットニーの双子の妖精姉妹だ。こちらの世界に来てからというもの、名店を食べ歩いて研究を重ねたそうである。美味しそうなフルーツパフェだ。いや、「そう」ではなかった。女子たちがうっとりとした表情を浮かべる。
「ねえ真綾、これのお代わりとかは?」
華が私のエプロンを引っ張る。ちょっと、恥ずかしいでしょ。
しかし、すぐにブラウニーさんがお代わりを持って来てくれた。少し小さめにして、しかも別アレンジが施されていた。
「ありがとうございます。凄いヤバい、まさかの“神”対応。」
華も大喜びだ。実は“魔”族なんですけどね。
「ところで高山君と真綾ってホントはどんな関係なの?」
紗栄子の質問に場が静まりかえった。奏はグラスの水で口を潤してから言った。
「御覧の通りの魔王とメイドですよ。彼女の主な仕事は私の護衛です。ご存知の方も多いでしょうが彼女は剣道でインターハイに出場する腕前ですから。そして元は幼馴染でもあります。だからこそ信頼のおける仲間なのです。俺は仕事は別として、真綾には高校生活を楽しんで欲しいと希望しています。
そして、俺は魔王ではありますが、私と私の眷属に害を加えようとしない限り誰にも危害を加えるつもりはありません。そこは安心なさってください。」
皆から感嘆の声が漏れる。
私はほっとしたが、同時に嫌な予感もした。
ホッとしたというのは、翌日からカフェテリアの3階に生徒たちが招かれるようになった。生徒たちと言っても奏が招いた生徒たちだ。
「やっぱりあの中に勇者側のスパイがいたようだね。」
もっとも、それは最初から織り込み済みだったようで、奏は我関せずのようだ。むしろ、あそこに招かれた唯一の生徒として悪目立ちしたくなかったという訳だ。セバスチャンさんはすぐそこに感づいたそうな。
そして、嫌な予感の方だけど⋯⋯。
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