陽キャ転入生な【私】の物語。「どうしよっかな。」

 久しぶりの学校だ。私は2学期を最後に学校を「卒業」したので3ヶ月ぶりだ。アメリカ資本下になったことでファッションに関する校則が大幅に緩和され、染髪もピアスも化粧も自由だそうだ。ガッチガチの公立高しか知らない私にとっては驚きの連続だ。でも目一杯に高校生活を楽しもうという雰囲気がある。


 私もすぐに友達ができた。バスケ部のレギュラーの紗栄子さえこ。テニス部のレギュラーのはな。そして、彼女を取り巻く運動部グループの子たちがまとめて友達になった。


「真綾は部活するの?去年のインハイ出てんだってね。実はすごい人だったんだって剣道部の子が言ってたよ。」

 うーん。どうしようかな。朝練があったら奏はいやだというだろうな。ギリギリまで寝ていたいタイプだし。


 お昼はみんなで中庭にあるカフェテリアで食べることが多い。奏は校内では自由に行動すれば良いと言ってくれている。ただ奏の動向の日誌をコーデルさんに提出しなくちゃいけないんだよね。それが護衛としての私の仕事なんだ。だからなるべくお昼ご飯は同じ時間帯に取るようにしてる。


 カフェテリアの奥には大きな金属製の二枚扉があって、そこに屈強そうなボディガードが立っている。あれなんの部屋だろう?紗栄子が答えた。

「ああ、あれでしょ?あれVIP室なんだって。冬から経営陣が代わったら突然増築始めちゃってさ。ほら、例の新しい理事長の親戚っていう留学生たちの専用なんだってさ。あそこが3階へのエレベーターでさ、1フロアがまるまる専用区画なんだって。」

 へえ。私はわざわざ奏に会いに来た4人の勇者一行を思い出していた。名だたるアメリカの財閥の子息が集まったらそれはそうなるよね。


 あ、奏がやって来た。身なりは普通だが、この学校に来てからは紅と碧の瞳の色が濃くなってそれが目立つようになっている。奏の弁当箱は私より一回り大きくて、私と同じく料理長のムッシュさんが毎日弁当を持たせてくれる。今日もあの地味な4人組とつるんでいるな。


 そこにリアム君のメイドさんが近づく。奏はうなずくと席を立ち、VIP室へと向かう。誰も気づいていないようだ。

「三橋真綾様。」

 後ろから声をかけられて私は驚いて飛び上がりそうになる。振り向くと執事服を着た白人のお爺さんが立っていた。その口元は笑みを湛えていたが眼光は鋭い。

 「クロエ・ミューロンの使いのものです。主があなたとの喫茶を所望いたしております。お受けいただけますかな?」


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