新米メイドな【私】の物語。「学校へ行こう!」

 うーん。確かに奏は魔王だけど、ほんとに勇者が乗り込んで来るとは思わなかった。しかし、大使から受け取った茶封筒の中身はなんだったのだろう。その答えを知ったのはその翌日のことだった。


 「真綾、昼食が済んだら執務室までおいでなさい。」

椿姫さんに呼ばれて、え、私?ってなった。執務室は和館の2階にある奏の仕事部屋である。


 そこには奏とセバスチャンさん、そして椿姫さんがいた。奏はかなり不機嫌そうな顔をしている。椿姫さんが切り出した。

「真綾。あなたの研修は本日を持って終了とする。正式な配属が決定した。」

おお、なんだろう?このお屋敷に来てとんでもない目に遭ってばかりなので、大抵のことでは驚かないつもりだ。


「ナースメイド班を新設し、そこのチームリーダーになってもらう。」

は?一瞬、メイド服風味のナース服を着た「フローレンス・ナイチンゲール」の写真が頭を過ぎる。


「ナースメイドとは基本的に主人のお子様のお世話係をするメイドだ。今回は旦那様ご自身のお世話をしてもらう。」

私は思わず笑いを噴き出しそうなる。奏がお子様、奏がお子様、うぷぷのぷ。大事なことなので二度わらいました。


「もちろん、旦那様とて大人だ。着替えや食事くらいはご自分できる。つまり、貴女の主な任務は旦那様の護衛だ。」

護衛?そんなこと言ったって、奏は勇者でもあるし、強い方なら執事さんたちの中にいるのでは?


「うむ。実は旦那様は勇者の挑戦を受けることになった。そのためだ。」

あの茶封筒か⋯⋯。

「旦那様は春から高校へ行かれる。それで真綾、あなたも同じ高校へ通ってもらうことになった。」

はい?


「彼らは日本の高等学校を『戦場』と決めたのだよ。この学校だ。」

私立ロックフォード国際高校。ここからすぐ近くにある学校だ。元は令和国際高校と言う名であったが、ロックフォード家がお買い上げになったのだ。さすがは財閥。


「ああ、ガッコなんか行きたくねーーーーー。」

奏が頭を抱えた。実は私もこの屋敷に「売られる」特典としてすでに高卒の資格は貰っているのだ。ここの仕事もそれなりにやりがいはあるけれど、やっぱり私は学校に行きたい。パパは私が高校時代を普通に過ごせるように自分の会社を諦めようとしてくれさえしていた。


「行こうよ奏。一応2年生からの編入だから恥ずかしくないじゃん。あんた一ヶ月ちょっとしか行ってないんだからほんとは1からやり直しでもおかしくないんだから。ね、いいでしょ?」


 


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