魔王な【俺】の物語。勇者パーティからの挑戦状。

「アメリカ大使の表敬訪問?」


 それが今日の午後に訪れる2組目の客だ。俺はアメリカから軍事衛星を8機ほど頂戴している。そのうち4機は偵察衛星。3機は「神の杖」と呼ばれる合金を射出する地上攻撃衛星、1機は他の衛星を攻撃するキラー衛星だ。


 もちろん、魔王の特殊な魔法があれば人間の軍隊など束になっても敵わないのだが、目に見える兵器を所持していることはそれなりに効果がある。さらにいつでも人間どもから武器を取り上げることができるという心理的圧迫にもなる。


 駐日アメリカ大使は最近交代し、海軍中将から転身したサンダースという男だった。彼は4人の十代の若者ティーンエイジャーを伴っていたのだ。


「きみが新しい魔王かね?」

大使はさすが軍人上がりだけあって俺から目を逸らそうともしない。

「今日は合衆国ステイツの意思を示しに来たのだよ。この方々こそが我らの正義の守護者、勇者のパーティだ。」


 金髪碧眼の少年が前に出る。彼は品の良いグレーのスーツに紫のタイを締めていた。

「リアム・『キャプテン』・ロックフォードだ。世界の平和のために僕が君を倒す。」

 続いてはブルネットの髪の美少女だ。モデルのようにすらりとした肢体にペールカラーのワンピがよく似合う。

「クロエ・『フラッシュ』・ミューロンよ。アメリカはあなたの存在を許さないわ。」

そして、筋骨隆々とした少年。ポロシャツがその肉体美を強調する。

「ノア・『エックス』・ミリガンさ。俺たちこそが正義なのさ。」

最後は小柄な美少女だ。デニムのボトムがそのすらりとした脚線美を強調する。

「ステラ・『エンジェル』・リュパンです。私たちの未来は私たちが守ります。」


 4人とも白人だ。なかなか「痛い」自己紹介だが間違いなく魔法の匂いを感じる。魔法回路を体内に持っている証拠だ。つまり、彼らに俺の特殊魔法は一切効かない。


「これで勇者と魔王の対面が叶いましたな。我々はきみを倒す。USAの正義の名の下に。ここからは我がUSAの正義と魔王の陰謀との戦争が始まるのだよ。」

 大使が高らかに開戦をつげる。いやいや、俺になんの関係もないでしょ。それにアメリカこそが正義というのも虫酸が走る。彼らの正義には「戦争には負けたことがない」という程度の意味しかない。


 「では魔王陛下、我らの挑戦を受諾するなら、ここに来られたし。」

大使はセバスチャンにA3サイズの大きな茶封筒を手渡した。

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