新米メイドな【私】の物語。「どうぞお構いなく」
今日から私はチェンバーメイドチームで研修だ。業務の説明は前話で奏がしたので省略。魔王城のメイドの制服はロングスカートで長袖のワンピースに、襟元にフリルがついた白いエプロンのいわゆる「ヴィクトリア様式」と呼ばれるものだ。
チェンバーメイドチームはパーラーチームより大所帯で4人1組の5班ある。私は吸血鬼族のチームに割り当てられた。天才肌のリーダーの「エビコ」。神経質なサブの「エーコ」。マイペースな「ビーコ」。大らかで人当たりのいい「オーコ」である。それにしても奏のやつまたテキトーな楔名を付けたな。絶対血液型からつけてやがる。ちなみに私は典型的なA型である。
私が奏の部屋から戻ってくるとエーコは私をたしなめる。
「真綾、旦那様を無理に起こさなくてもいいのよ。それはセバスチャンの仕事だから。」
ああ、お構いなく。ついでなんで。だいたい貴女方が甘やかすから奏がぐうたらニートになったんじゃないですか。このまま奏が「
今日は来客の予定のため、迎賓館も兼ねる「和館」の方でパーラーチームの助っ人である。昨日はその準備のため「和館」担当のチームの掃除のヘルプに入っていた。だからみな奏の予定には詳しいのだ。そう、本人よりもだ。
午前中のお客様はご近所の「帝大前商店街」の世話役さんたちであった。
奏は一段高いところに作られた玉座にふんぞり返って座り、客人を冷ややかな視線で見下ろす。黙っていると物凄い威圧感である。ちょっと、おじさんたちの目が泣きそうになってるから。
彼らの陳情は魔王城の園庭の一般開放の要請だった。もともとこのお屋敷は都の公園であり、市民の憩いの場であったのだった。しかし、魔王城になったため一般市民の立ち入りが禁止されてしまったのだ。それで最寄りの駒場帝大前駅の利用者が減って商店街の売り上げも減ってしまったというのだ。
しかし、このお屋敷はテロリストどころか正規軍にすら狙われているため危険だ。ところが奏はあっさり一部の開放を許可。その線引きについてはセバスチャンさんに一任、という裁可を下したのだ。セキュリティを預かる執事のセバスチャンさんは嫌そうな顔。一方、庭師長のマリコさんはうれしそうである。自分の世話した庭を見てもらいたいのだろう。
問題があったのは、午後のもう一組のお客様の方だった。
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