新米メイドな【私】の物語。「ちょっと無理かも。」

「真綾、貴女は旦那様に恋慕しているのかしら?」

椿姫さんの問いに、私はいいえと答えた。

「そうであれば淫魔サキュバスどもの奉仕など気にする謂れはあるまい。第一あれは人間ではない、魔族だ。そして、本当の姿は人とは全く異なる。彼女たちのは生殖ではなく捕食だ。言うなれば旦那様にとっての腸内細菌みたいなものだ。貴女は恋人のビフィズス菌に嫉妬するのかしら?」


  うーーーーーん。いまいちその例えに納得いかない。理論的に考えると、奏は私のために死んじゃって、私は恩に報いるべく無理やり頑張っていたところ、あっさりあの世から帰ってきやがったのだ。


 みんな悲しんだり大変な思いをしていたのに本人は向こうでのうのうと面白おかしく生きていた。しかも、魔王になってたせいで日本政府と契約。日本政府はアメリカと奏の板挟みにあって奏を激怒させ、許しを乞うために私を生贄に差し出した。


 どう考えても私に奏を好きになる理由がない。でも奏が淫魔さんたちとイチャイチャするのは腑に落ちない。なんでだーーーーーー!?


 とりあえず話を聞いてみよう。ねえ、奏ってどんな存在なの?淫魔さんたちに訊いてみた。ここの仕事はだいぶゆるくてたいていの仕事は魔法で簡単に片付くものだから休憩の合間に仕事をする感じ。今日も奏の昼食が終わったからチームは全員お昼ご飯休憩だ。 ただ、食事を摂るのは5人の中で私だけ。淫魔さんたちは美容に効くゼリーとかドリンクとかばかり。


「アタシは『うな重』⋯⋯かな。」

「ああ、それわかる!」

  マナとナナにとっての奏は「うなぎの蒲焼」らしい。匂いだけでご飯が何杯でもいける感じだそうだ。


「ウチは『ステーキ』かな、肉汁たっぷりなやつね。」

「わたしもそれ!」

カナとサナにとっての奏は「ステーキ」なのだそうだ。食欲をそそる匂いがするちょっと高級な「食べ物」なのね。


奏って恋愛対象になる?って聞いたら笑われた。

「真綾は今食べてるご飯と結婚したい?それと一緒よ。」

なんかひどい言われようだ。


「そうか、私たちの本来の姿を見たことがないんだね。良いよ。真綾だけに特別に見せてあげる。」

4人は私を宿直室に連れ込むとメイド服を脱ぐ。なんてプロポーションなの、とたじろぐのも束の間、みるみるうちに姿を変える。虫系⋯⋯というかもう「蟲」って感じの⋯⋯すいません、モザイクお願いします。さっきのお昼ご飯リーバスしてまう!


私は嘔吐えずきそうになるのを堪えながらもなぜかホッとしていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る