新米メイドな【私】の物語。「ふ、不潔だ。」

 私が研修先に最初に配属されたのは「パーラーメイド」チームだった。「パーラーメイド」というのは接客や給仕で中心的な役割をするもので、メイド喫茶のメイドさん、と言ったらわかりやすいかも。私は行ったことないですが。


 先輩は4人の「サキュバス」である。カナ、サナ、ナナ、マナ。淫魔だけあってフェロモンがダダ漏れ。全く露出の無い制服を着ているにも拘らずエロくしか見えない。女の私でさえくらっと来そうな色香である。


 ちなみに、4人の名前は奏がつけたそうで、実際には真の名前がその後に続くのだそうである。名前をつけられるというのは主従の印らしく「楔名けつめい」というのだそうだ。それで執事だからコーデルさんは「セバスチャン」なのね。なんのひねりもねー。


 スタッフ食堂はいつも食事や休憩のスタッフが和気藹々とたむろしている。厨房ではシェフが腕を振るうがほとんどはスタッフ向けの賄いだ。私もここで食事を摂る。いつも美味しい。ムッシュさんは超一流のシェフなのだ。


 そう言えば4人が食事をしているところを見たことがないな。いつ食事してるんですか?そう尋ねると妖艶に微笑む。やばっ、私女なのに今背筋がゾクッてなった。

「私たちはみんなと同じような食事はいらないのよ。強いて言えば『白いローヤルゼリー』かしらね。」


 白いローヤルゼリー?意味を聞いても答えてくれない。

「『お子様ねんね』にはまだ早いわよ。」

そう言ってはぐらかされた。


 私は主に奏の朝食の世話の当番が割り振られている。それ以外は椿姫さんに付いて教育されることが多いのだ。今日も椿姫さんの最終の見回りに付く。すると奏の寝室からナナさんが出て来た。


「ナナ、今日は食事の日?」

椿姫さんに聞かれると、ナナさんはウットリとした表情を見せる。

「ええ。極上のゼリーをいただきました。まさに神樹の樹液ですわ。」

「あまり吸いすぎるなよ。」

椿姫さんは苦笑いを浮かべる。

「ええ。口が肥えすぎたら後が厄介ですもの。自重しますわ。真綾さん、明日も早番よろしくね。ではおやすみなさいませ。」

ナナさんは溌剌とした足取りで去っていく。ヒップの位置高っ。


 そういえば白いローヤルゼリーってなんですか?私が尋ねると椿姫さんはしれっと答える。

「旦那様の精液だ。魔王の精液は淫魔サキュバスにとっては極上のご馳走でな。」

ええええええええええええっ!?


「だからあの4人の選抜は大変だったんだ。何しろ募集が4人に1万人以上の応募が殺到してな。暴動になりかねないので交代制だ。なにしろこの後5年先まで予約でいっぱいだからな。」





 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る