第3章:魔王様な【俺】と新米メイドな【私】の物語。
新米メイドな【私】の物語。「負けるもんか!」
「頼もう!」
現代の魔王城に足を踏み入れた私の第一声である。気を張って来たものの圧倒的なお屋敷である。もちろん、お客様のように表玄関からではなく、裏の通用口からの入城である。
私はまるで道場破りにでも入るような勢いで声をあげた。日本政府の差し金とはいえ、パパとママは会社のために私を「売った」ことになる。その原因はここにいる魔王、高山奏なのだ。確かに、私を助けたくれた恩人だけど、私を「手に入れる」ために姑息な手段を使うなんて絶対に許せない。私の心の中でも奏の位置は完全に「勇者」から「魔王」へと振り切れたのだ。
「しーっ、声が大きいよ、真綾君。」
私に付き添って来た内閣府の役人、田崎さんが驚いて慌てて私を制した。
「どちら様ですか?」
突然、
「あの、戸泉の使いでまいりました田崎と申します。本日は先日のお詫びにまかり越しまして。」
とても綺麗な女性だ。クールビューティーとでもいうべきか。黒がベースのエプロンドレスに黒髪をきっちりとお団子に結い上げていかにも仕事ができそうなタイプ。
彼女は私を一瞥すると一瞬驚いた表情を作りかけるものの、すぐに無表情へと戻る。
「あら、その方が件の『誠意』ですのね。」
田崎さんは私と書類を女性に引き渡すとそそくさと屋敷を立ち去っていったのだ。ちょっ、そこで逃げる?
「私は
あの、靴はどこへ?
「
ここはお屋敷の中でも
そこで待っていたのは気難しそうなスーツ姿の男性、高いコック帽をかぶった男性、作業服姿の女性だった。コックさんと作業服の女性が私を見た瞬間、眼を丸くして慌てて立ち上がる。
「マーヤ様!?」
様ぁ?いきなり「様」づけに私も目を丸くした。
「慌てるな。この者はマーヤ様ではない。ただの人間の娘だ。“人”が悪いぞ
笑いをこらえる椿姫さんを執事姿の男性がたしなめた。
「当然だ。“魔族”だからな。」
この4人が今日から私の上司。
執事のセバスチャンさん。
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