帰ってきた【俺】の物語。華麗なる?シングルライフ。

 魔王としての俺の生活が始まった。今年の1000億円分はすでに働いてしまったので、来年まで仕事の予定はない。


 ただ条件もあった。俺はすでに死んだ人間なので家族とは今後一切接触してはならないということだった。勿論、俺の命を狙う連中が家族を人質にしないための措置でもある。異世界から勇者が派遣される可能性が無いとは言わないが、民衆を直接食い物にしているわけではないので今のところ心配は無いはずだ。


 有り余る金を消費するため、管理会社と契約し広大な敷地の世話と屋敷の管理、掃除洗濯を委託。食事は外食かケータリング。ここが現役で貴族のお屋敷だった頃は100人を超す使用人がいたそうである。


 学校に行くでもなく、やることと言えばネットかゲームくらいである。こう考えると実家でニートをやっているのが人生勝ち組と言えるのでは⋯⋯、いやいや、俺はちゃんと働いたよ。


 残るは性欲シモの世話くらいか。とはいえ、下手に人間の女性を呼び込むのはリスクがでかい。刺客やスパイを送り込まれる可能性が非常に高いのだ。配下の淫魔《サキュバス》でもゲートを使って召喚することにしよう。


 事態は突然動き出す。俺が夜中にせっせとネトゲに取り組んでいると、結界が解除されていく気配を感じる。

探査サーチ。」

 これまた流行りの探査魔法で探知したのは重武装した兵士たちだ。軍用車ハンヴィー数台で敷地内まで乗り付け、小隊ごとに行動している。兵士としてもかなり良く訓練された動きだ。


「旦那様。」

 そこに魔人が現れる。魔王を支える四天王の一人、魔執事コーデルグラキウス、しかし俺はセバスチャンと名付けている。執事は「セバスチャン」でなければならないのだ。

「敵襲でございます。魔王の寝所を騒がせるとは万死に値します。捕らえて50年ほど拷問にかけなぶり殺し、100度ほど食用豚に繰り返し転生させ、屠殺の恐怖と苦痛を際限なく味わせましょうか?」


 淡々と怖いことを言うところはやはり四天王なのだろう。俺は手を振ってそれを制する。客人の所属は?

「はい、装備からして米軍の特殊部隊に間違いないでしょう。」

ネイビー・シールズか。お客人ならもてなすのは主人の務め。

「旦那様は最近FPSに凝っておられましたからね。」

いやいや銃撃戦ドンパチなんかやらないし。


俺は立ち上がった。


  

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