帰って来た【俺】の物語。家族との再会。

 幸子ばあちゃんの仲立ちで、俺はようやく家族との再会を果たした。やはり会えばすぐに家族とわかってもらえた。母は泣きじゃくり、しばらく俺を抱きしめたまま離そうとしなかった。


 ただ、俺は念のためDNA鑑定をすることを申し出て、結果が出るまではばあちゃんの家に居候させてもらうことを告げた。


 正直、この件に関しては俺にも自信がなかったのだ。俺は俺自身なのか。それとも俺を模して作られた何かなのか。ただ、家族しか知りえない共有の情報がある、というのが何よりの「状況証拠」ではある。


 俺は別に人目を気にすることもなく街をぶらぶらしていた。しかし、俺にはまだ危機意識が欠けていたのだ。魔物が跋扈する異世界とは違い、人間の嫉妬や欲望が跋扈しているのがこの現世であることを。いや、そうではない。王宮の中もそうだったじゃないか。


 警察が不審な人物として報告を上に上げていたのだ。俺は突然両脇から屈強な男たちに腕を掴まれると有無を言わさず黒いセダンに連れ込まれる。

「公安だ。」

 再び警察署の取り調べ室まで連れてこられると、彼らは居丈高に名乗った。俺は自分が事故で死に、異世界に転生して任務を果たし、そしてこの世界に戻って来たことを説明する。真面目に聞いてくれるのは嬉しいのだけど信じてくれているわけ?


 俺は先ほどの黒いセダンでばあちゃんの家まで送ってもらう。玄関を開けると見知らぬ靴がいくつも並んでいた。

「ただいま。」

「奏、遅かったわね。徹也さん来てるわよ。そして、可愛らしいお客さんも。」

ばあちゃんは凄く嬉しそうだ。語尾に絵文字でハートマークがつきそうなくらいご機嫌だった。ちなみに「徹也」は父の名である。


 俺がリビングに入るとそこにいた全員の目が一斉にこちらを向く。そこに少女がいた。そう、三橋真綾だ。真綾は信じられないものでも見たように目を大きく見開いている。俺はすぐに異世界のマーヤの表情を思い出した。


 そう、俺が愛した女性。掛け替えのなかった恋人。

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