転生した【俺】の物語。勇者の二つ名は「旋律」。

  俺の転生先は「アストリア王国」という国であった。大陸の東端を走る山脈の尾根伝いを国境が走り、その海岸線との間の地、そして海に浮かぶ島々を治める国。良港に恵まれ、海運と交易と漁業が盛んな国。


  日本に似ているな。そう思った。


 俺の両親は楽団員である以上、子供の頃から家を留守がちだった。就学前は同行していたが、小学校に上がってからは母方の祖母が面倒を見に来てくれていた。幸子さちこばあちゃん。父方の実家は茨城だったので同じ市内に住んでいたばあちゃんが来てくれたのだ。 だから異世界ここに来てもあまり俺はホームシックというものにかからなかった。


 俺がこの異世界への門の前で組まされたパーティは俺を含めて5人だった。

一人は魔法使いのスキルを得た香港出身のジャスティン・ラウ。中国名は羅堯ラ・ギョウ。二人目は槍術士兼治癒師のスキルを得た日本人の小津健介おづけんすけ。三人目は魔銃士のスキルを得たアメリカ人の少女、エリス・ワイルド。四人目は剣士兼錬成術師のイタリア人トニー・ジラルディーノだった。


 俺のスキル?剣士兼精霊術師ってやつだ。呼び出す精霊によってなんでもそつなくこなす、まさに「日本人」向けである。そして、それは鍵盤のついた魔道具で操ることになる、俺の二つ名は「旋律の精霊剣士」だそうだ。


「ところで奏はなぜ死んだの?」

エリーは屈託無く聞いてくる。⋯⋯ダンプに轢かれた、そう答えるとお腹を抱えて笑い転げた。

「oops!まさにテンプレート!」

うるさいよ。テンプレはトラックじゃ。


「トラックとダンプはどう違うの?」

ああ、荷台が油圧リフトで昇降するのがダンプでトラックはそれ以外だ。ってなんの話だ。

 ちなみに健介もジャスティンも事故死。トニーとエリーは銃でやられたそうだ。洋の東西の違いを感じるな。


 で、誰がリーダーなの?

するとトニーとエリー、そしてジャスティンが手をあげる。ここは日本人とそれ以外の性格が出たな。

「どうする?」

健介が小津だけにおずおずと聞いてくる。じゃあ、みんな手を挙げてからくじ引きで決めるか。俺と健介も手を挙げると俺以外みんな一斉に手を下げる。

「ドーゾドーゾ!」

うわぁ、まんまと嵌められたあ。





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