転生した【俺】の物語。俺が現世で成し遂げた唯一の功績。その2
真綾はすっかり疎遠になった幼馴染だった。中学になってからは言葉を交わしたことすらなかった。
いや、一度だけあったか。俺は学校内の合唱コンクールなどでピアノ伴奏を担当することが多かったので、その時声をかけてくれたのだ。
「奏くん、ピアノ上手いね。そういえば音楽一家だもんね。」
俺は明らかに苦笑を浮かべていた。
「俺以外はね。」
「そんなことないよ。私、奏くんの演奏、好きよ。ほら、文化祭でやった、クイーンのピアノだけ完コピ、あれ、かっこよかったよ。」
それだけ言って真綾は同級生の元に駆けていった。そう、たったその一言だけで、俺は今でもピアノだけは細々と続けていたのだ。
通学路に車が増える。工事渋滞を避けてこんな細い道までナビに連れて来られる車が結構いるのだ。
真綾がスマホをチェックしている。歩きスマホは校則違反なので、きちんと立ち止まるところがさすがだ。しかし、そこに土砂を積んだトラックが入って来た。道幅いっぱいに進んで危ない。
「
そのトラックは真綾に気がつかない。おそらく、運転手はスマホでナビを見ているのだろう。俺はとっさに身体が動いてしまった。真綾を突き飛ばした瞬間、身体に衝撃が走る、何も出来ないまま俺の身体は宙を舞い、20m先の道路の路面に叩きつけられる。
俺は衝撃に身を捩りながらも真綾の無事を確認しようとするが、叶わず天を仰いだ。俺を呼ぶ声がする。一気に激痛が身体を駆け巡り、許容値を超えた俺の意識はそのままブラックアウトした。
つぎの瞬間、俺は真っ白な部屋にいた。そこにいた妖艶な美女は自らを女神と名乗った。
「あなた、死んだのよ。」
唐突に告げられる真実。俺はきょとんとする。俺は死ぬ際に示した勇気によって勇者として転生するように招かれたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます