第3話 マナブと念写(前編)
あの世紀の決闘から早一週間。
俺とツヨシは更に仲良くなり、もはや親友と言っても差し支えのない仲になっていた。
もちろん日々の鍛錬も欠かしていない。
欠かしてはいないが、成果も得ていない。
精々集中力が長持ちするようになったくらいだ。
ちなみ成果とはもちろん楓のパンツを拝む事である。
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「学ちゃーん! 朝だよー」
いつものようにユサユサと揺り動かされる刺激で目が覚める。
毎度のことで頭が下がる気持ちだが、素直に起きるわけにはいかない。
なぜなら昨日は深夜まで、最高級カツ丼を食べるためにツヨシとデュオで銃撃戦に勤しんでいたからまだ眠いのだ。
「すまん楓、俺は今起きるわけにはいかないんだ……」
「え? どうしたの?」
「実は……恥ずかしながら寝小便をしてしまったんだ。後始末やら着替えをしたいけど楓がいたら恥ずかしくてできないんだよ」
これで楓が気を使って部屋を出ている内に二度寝するって寸法よ。
フフフ……完璧な作戦だ。
俺の人としての尊厳は決壊寸前だが、甘美なる二度寝の前では些事なことよ。
「ええっ? た、大変! んと……じゃあ私が学ちゃんの着替えを用意するから、その間に布団の中で服脱いでてよ。そのあとでおばさんにゴメンナサイしに行こ? ね? 一緒に謝ってあげるから」
……うん。
騙そうとしてごめんなさいでした。
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学校へ着き、自分の席に座るとすかさずツヨシが俺の方へやってきた。
「おはよーマナブ!」
「おはようツヨシ、昨日は惜しかったな」
二人で昨日の銃撃戦での出来事を話しているとツヨシが神妙な様子で話を切り出してきた。
「実はマナブ、ちょっと報告したいことがあるんだ」
「ん? なんだよ改まって……」
周りに聞かれるとマズイ話なのかツヨシの声が小さくなる。
「写真部が販売している例の女子のブロマイドがあるだろ? あれがどうにも変なんだ」
例の女子のブロマイドとは、我が校の写真部が伝統的に販売している物だ。
過激な物ではなく、女子の日常を切り取った健全な写真だが、日常で見せる一瞬の可愛い瞬間を見事に捉えたそれは男子学生の間で人気が高く、校内におけるトレーディングカードの様な扱いになっている。
だが健全な写真とはいえ女子にバレればひんしゅくは免れないので男子だけの間で秘密裏に取引をされている物なのだ。
「これを見てくれ」
ツヨシが取り出した写真は楓が写ったものだった。
それは料理上手な楓が珍しく調理実習でミスをして、照れ笑いを浮かべていた瞬間を激写したものだったのだ。
ほほう、これは中々のレアだ。
「いくらだった?」
「千円だ」
俺は流れる様な動作で財布から千円札を取り出しツヨシに渡す。
そして実にスムーズに写真を懐に入れようとしたところで、この写真の違和感に気づく。
この写真を見て調理実習の時とすぐにわかったのは俺もこの場にいたからだ。
そしてこの場に居たからこそ不自然な点に気づく。
ツヨシも同じクラスなだけあってこの場に居たから、変だと思って俺に報告に来たのだろう。
そう、この調理実習中に楓の前でカメラを構えた奴などいなかったのだ。
「気づいたか?」
「ああ、楓の前には誰もいなかった……服に仕込んだ小型カメラでもこの写真を撮ることは不可能だ」
ではどうやって……?
「なぁマナブ……念写って知ってるか?」
念写とはカメラのレンズの蓋を閉じた状態で、何処か別の場所や心の中に思い浮かべている物を撮影する事ができる超能力の一種だ。
俺たち二人の能力は力が弱いが念動力、いわいるサイコキネシスというやつで念写とは別物だ。
という事はつまり……
「俺達以外の……第三の超能力者が写真部にいる?」
「そういうことだ」
超能力者のバーゲンセールかよ。
だが待って欲しい。
よく考えると念写が出来るという事は、その気になれば更衣室のやローアングルからのパンツなども隠し撮り出来るという事になる。
つまり販売には健全な写真しか使わず、お宝写真は自分のコレクションにしているということだ。
なんと! 実にうらやまs……いやいや、けしからん!
「つまりこいつは、その気になれば更衣室のやローアングルからのパンツなども隠し撮り出来るのに、販売には健全な写真しか使わず、お宝写真は自分のコレクションにしているということだ。実にうらやまs……いやいや、けしからんと思わんか? マナブよ!」
やはり俺とツヨシは完全に同じ思考回路をしているようだ。
「ツヨシ……俺たちでこの学校にはびこる悪の超能力者を成敗しよう」
「ああ、相棒よ!」
お宝の独り占めはずるいぞ!
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昼休み、俺とツヨシは急いで昼食を食べ終え写真部の部室へと突撃することにした。
昼休みになる前にある程度、写真部についてはリサーチをしてある。
現在写真部は部員が一人しかいないのに廃部になっていないという、女子の間でのみ謎の部活とされていた。
生徒会長は男なので廃部にならない理由はわかりきっている。
ただ一人の部員の名前は
”撮おる”だなんていかにも写真を撮りそうな名前だ。
まずこいつが超能力者で間違いないだろう。
写真部の部室へとたどり着いた俺達は、部室の前で一度呼吸を整える。
俺は懐から例の楓の写真を取り出し、勢いよく部室の扉を開いた。
「この写真を撮ったのは誰だぁ!」
部室の中を見渡すと……いた! 海原だ!
俺は畳み掛けるように言葉を続ける。
「この写真を撮影できる位置に人はいなかった……つまり小型カメラでもない、木苺でもない、そうか桑の実だ! あ、いや違った念写だ! そうだろ?」
なんと巧妙な罠だろうか?
海原の名字のせいで、某有名グルメ漫画のワンシーンをついやってしまった。
おのれェ海原ァ!
俺の言葉を聞いた海原は不敵な笑みを浮かべる。
「ククク……それが念写だとわかると言うことは、君たちもお仲間ってことだね?」
今ここに世紀の超能力バトルの第二戦が開幕しようとしていた―――――。
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「でさー俺とマナブの能力は軽いものなら動かせるショボい能力なんだよー」
「僕だって似たようなもんだよ。念写といっても色々制限があるんだ」
トオルの能力は手にカメラを持っている事が条件で、念写出来る位置は視界に収まってる範囲限定らしい。
楓を撮影できたのも、実は調理実習は二クラス合同で行っており、俺達のクラスとトオルのクラスでやっていたからだ。
念写で写す位置は平行移動はできるが垂直移動きが出来ないそうだ。
つまり、自分は動かずに近づいての写す事は可能だが、壁を挟んだり上下の角度を変えると写す事は出来ないというものだった。
仮にローアングルからパンツを写そうとしたら、カメラを持って女子の足元にスライディングしてパンツを視界に捉えないといけないらしい。
……うん。シャッターを切っていなくても事案だな。
俺たちは自分の超能力で何が出来るかを語り合った。
ちなみにバトルはしていない、先程のはノリで言っただけだ。
トオルが事実上、更衣室やパンツの盗撮が出来ず、お宝写真を隠し持っていない事がわかったので俺たちは普通に仲良くなっていた。
「ところでさぁ、僕の念写と君たちの念動力を合わせれば、前々からやりたかった事が出来ると思うんだ」
「ほう」
「聞こうか」
トオルの話に俺たちは耳を傾ける。
「作戦の詳細は後で話すから先にそのやりたい事を話すね……それは、女子の着替えを激写する事さ」
「「マジか……」」
流石にまずくないか?
「ちなみにターゲットは決まってるんだ。」
ちょっと待ってくれ。
この流れ……まさか楓か?
もし楓がターゲットなら俺は全力で止めにかかるぞ。
「
「「乗った!」」
楓がターゲットでないなら俺は男として、おこぼれのエロスのチャンスを逃すわけにはいかないのだ。
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