第2話 冒険者のお仕事。
「よっ」
「ギギィッ!」
俺の一太刀は一撃でゴブリンの首を切り落とす。
ゴブリンは短い叫びを上げ、絶命し、魔石を落とす。
「ん、今日はこんなものかな」
空を見ると既に陽は西に傾いており、もう少しで日が暮れる。
もう少しすると、他の冒険者たちもギルドへ戻るため、俺は混雑する前に戻ることにした。
「すみません、換金お願いします」
ゴブリン狩りを終え、ギルドに戻ってきた俺は受付に向かい魔石の換金へ向かう。
「あ、レオくん、お帰りなさい。ただいま換金しますね」
そう言って、対応してくれたのは最近親しくなったギルドの受付嬢のミリアさんだ。
貴族家を勘当されて一週間ほどが経ち、俺は隣町のミレーヌで冒険者登録し、ゴブリンを狩って日銭を稼ぐ日々を過ごしていた。
家を出る際に渡されたわずかな金も装備を購入したら底をついた。
貴族家長男が一転、一文無しの駆け出し冒険者になるとは人生わからないものである。
「おい、雑魚ルーキーどけよ」
ミリアさんの換金を待っていると、突然後ろから声をかけられる。
振り向くと、そこにいたのは5人組のDランクパーティたち。
たしか、リーダーはスワンとか言ったか。
「あはは、すみません。どうぞ……」
基本、冒険者は実力主義だ。
それを物語るように、冒険者にはF〜Sのランクがあり、Fは駆け出し。E〜Dが中堅。C〜Bでベテラン。A〜Sはバケモノと呼ばれている。
実際、Aランクは世界で12人。Sランクに至っては魔王討伐を果たした初代勇者のみだそうだ。
そして、俺の冒険者ランクはもちろんF。
それに加えて"落ちこぼれスキル"だ。いくら貴族家として剣術を習っていたとしてもDランクのこいつらには敵わない。
だから、簡単に頭を下げる。情けない話だ。
Dランクパーティのスワンたちは俺を押しのけミリアさんのカウンターに居座る。
「ミリア、換金だ……それと、今夜一杯どうだ?」
「……結構です」
「ちっ、連れねぇなぁ」
ミリアさんは言い返すと俺が酷い仕打ちを受けると理解しているため、何も言わずに対応する。
けれど、その顔は軽蔑に満ちていた。
その後、30分ほど経ってようやくスワンたちが退いてくれた。
「ごめんなさいね、レオくん」
「いえ、俺にもっと力があればいいだけですし。早く一人前になって、ミリアさんたちを守れるような男になりますよ」
俺の言葉を聞いて、ミリアさんは顔を赤くする。
「レ、レオくんそれって……」
「あ、俺そろそろ宿に戻らないと! それじゃあミリアさん、また!」
そう言って、俺はギルドを出た。
ミリアさんが何か言いたそうにしていたが、また明日聞けばいいか。
***
……マズイことになった。
ミレーヌの街にきて一ヶ月ほどが経過した。
順調だったゴブリン狩りも、本日、最大のピンチを迎えることになった。
剣が刃毀(はこぼ)れをしたのだ。
無理もない。一ヶ月毎日ゴブリンの首を狩っていれば、刃毀れもする。
けれど、剣を整備に出すと宿代が払えなくなる。
マズイことになった。
くそっ……
俺はぱんっ、と自分の頬を両手で叩き、気合いを入れる。
こうなったら、アレをやるしかない……!
『急募! 荷物持ちでもなんでもします! パーティに入れてください!』
秘技、寄生!
刃を振るわず金を稼ぐにはこれしかない。
卑怯でも汚いでもなんとでも言え! こちとら、生きるのに必死なのだ。
そんな張り紙をあまり乗り気じゃないミリアさんを説得して掲示板のど真ん中に掲示させてもらう。
すると、すぐにコンタクトがあった。
「よう、レオ……何でもするんだよなぁ? 俺らが雇ってやるよ」
げぇ……スワン……
よりによって1番雇われたくないやつに雇われた。
けれど、生きるためだ。これも我慢しよう。
「俺たちはランクアップのためにこれからダンジョンに潜る予定なんだ。精々、囮として使ってやるよ」
スワンの言葉に、他のパーティメンバーがどっ、と笑い出す。
「よ、よろしくお願いします……」
俺はスワンたちに頭を下げる。
どうか、生きて帰れますように……
そう願わずにはいられなかった。
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