"落ちこぼれスキル"の俺が剣聖と呼ばれるまで。

けにお。

第1話 プロローグ。

この国、リーゼハルト王国では、5歳になると洗礼の儀を受け、スキルを授かる。


スキルの種類は様々で、大きく分けると身体能力拡張系スキルと異能系スキル、通称魔法スキルに別れる。


中でも魔法系のスキルは様々な用途で活躍できるため、重宝される。


そうしてできたのが、今の世の中に蔓延る《スキル至上主義》だ。


授かったスキルの良し悪しによって、優劣をつける。

それは、貴族社会に多く見られ、酷い家だと実の子供を勘当したりする。


まぁ、それが、俺なんだけど。





***




「出て行け、二度とヴァンシュタイン家の敷居をまたぐな」


珍しく、父さんの書斎に呼び出され、半月ぶりの会話がこれだった。


俺が勘当された理由は一つ。

俺が授かったスキルは《紅眼》と呼ばれる目が良くなるだけの所謂"落ちこぼれスキル"だからだ。


「……かしこまりました。今までお世話になりました」


そう告げて、書斎を出る。

15歳の成人になるまで養ってくれた辺り、まだ優しい方なのかもしれない。それとも単に貴族家としての建前か。


まぁ、どっちでもいい。



「にいたん?」


荷物をまとめるため、自室に向かう途中にまだ幼い妹のシェリアに呼び止められる。


「シェリア……」

「にいたんどこいくの? しぇりあもいくー」


無垢な笑顔で慕ってくれるシェリアに申し訳のない気持ちでいっぱいになった。


「ごめんなシェリア、兄ちゃんちょっと遠くへ行くんだ。だから、お留守番しててくれ」

「えー、しぇりあもいくー」

「ごめんな、いい子にしててくれ。ハンス」


そう言って、シェリア専属の執事を呼ぶ。

ハンスは俺が小さかった頃面倒を見てくれた、爺ちゃんみたいな存在だ。


「頼んだ……」


その一言にハンスは目頭を押さえながら、声を振り絞る。


「……かしこまりました。どうか、お身体にはお気をつけください」

「あぁ、ありがとう」


俺はハンスにお礼を、シェリアに別れを告げ、家を出た。


俺、レオ・ヴァンシュタインは15歳にして家を失った。


さて、これからどうするかな。



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