第22話~物語の終わり~

「蜂蜜色の空と蒼」最終話

 広夢の一周忌に久しぶりに懐かしい仲間たちが思い出の場所に集まった。

 故郷の海辺に来ると、あの頃のみんなに戻る、堤防に腰掛けて並んで海を眺める。


 みんなの笑い声、回し飲みしたコーラの味

ふざけて服のまま飛び込んた春の海の冷たささえもかけがえのない思い出だった。



 打ち寄せる波と海の匂いは変わらず存在していて水平線には漁船がいくつも並んでる、変わらない景色なのに、そこには日に焼けた笑顔の広夢はいない。

 それはいちばん悲しいことなのだけど。

 僕達の心の中に今も生きている広夢はきっと笑うだろう。


 蒼は広夢が亡くなってから

 ずっと暗闇の中で生きていた、やがてその深い闇の中で出会った小さくて細い光の筋が蒼の指先に辿りついた。

 その光の先には何があるのかはわからない、でもその光とともに歩き出そう。

 海辺のあの堤防で僕達はその青春を駆け抜けた、そして今それぞれの輝く場所へと最初の1歩を歩き出した。


 蒼い空はやがて蜂蜜色の空へと色を変え

静かに夜を待つ。

そして僕達の背中を…その仲間たちの全てを優しく包む。





 ✣TheEND✣

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

《応援コメント》

 それぞれの道へ歩き出した仲間たちにエールをいちばん送っているのは広夢君なのでしょうね。

 この数ヶ月は私にとって忘れられない日々になりました。ありがとうございました。


《返信コメント》

 最後まで読んでくれてありがとうございました。

 そして、僕に書き上げるチカラを与えてくれたのは咲良さんだと思います。


 次の満月の夜を楽しみにしています。


 ◇◇◇

 そのメッセージは真理亜の心の中で優しく煌めいている。

 秘めた想いを伝えるだろうその日に思いを馳せた。



 次の日にはまたあの場所を訪れた。

 Cafeこもれびは真理亜にとっての安らぎの場所になっていたし、マスターは生きて行くために最低限必要ないろんな言葉をくれる

 そのひとつひとつは小さなことなのだけど、真理亜にとってかけがえのない支えとなっていた。


「マキさんってきっと幸せだったのでしょうね」

 マスターはコーヒーを入れる手をそのままに返事をした。


「そんなことはマキもわかっているはずだよ、だって僕が今でもこんなに愛しているんだからね」


「マスターって、情熱的だったんだ」


「あれ?気づいてなかったの?ところで蓮君とはその後どう?」


「…今度の満月の夜に会えると思います」


「それは良かった、また2人で来てくれるんだよね」


「もちろんです、この場所は私と蓮君にとっての思い出のスタート地点ですから」


「それは嬉しいことを言ってくれるね、そしてそれは…永遠となる………そうなるといいね」


 マスターが入れるコーヒーは美味しい。

 苦味の中に優しさも入っているから。

 口に含むと芳醇な香りが広がった、それは真理亜を包み抱きしめるように身体中に染みてくる。


 満月の夜まではあと3日…

 そばにいたいと言ってもいいのかな?


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