第21話~蓮と佳奈~
佳奈と付き合うきっかけは大学に入ってから始めたアルバイトだった、駅前にある大手の塾の講師を始めた蓮は、派遣されて個人宅での家庭教師や塾での講師の助手として週に2~3日働いていた、そして同じ大学に通っている佳奈と自然に仲良くなり、やがてつきあい始めた。
つきあい始めて半年、初めての蓮の誕生日佳奈は誕生日を祝うために料理を用意して蓮の部屋で待っていた、喜んでくれると思った佳奈は蓮の表情に傷ついた。
「ごめん、祝ってくれるのは嬉しいけど…今日は親友の命日でもあるんだ」
佳奈は蓮の悲しそうな表情に何も言えなかった。
別れるきっかけは、テレビの番組を観ていた時だった「ジェンダーアイデンティティ」の特集の番組
佳奈は言ったのだ「友達や家族にそんな人がいたら縁を切りたいし、同性にそんな感情抱くなんておかしいと思うしキモい…」
自分と同じく医師を目指している佳奈からそんな言葉を聞きたくなかった、この世の中には自分でその気持ちに苦しんでいる人がいることを否定してほしくなかった、そして親友だった広夢を侮辱して欲しくなかった。
その頃から2人の間はギクシャクして
2年目に入る直前に佳奈は蓮に別れを告げた。
蓮と佳奈はキャンパス内でもよく合うし会えば立ち話もする友達としてのつきあいになった。気まずくないとは言えなかったがお互いに自然に振舞っていた。
誕生日の夜電話をしてきた佳奈はプロポーズされたと言った、別れてはいるけど嫌いで別れたわけでもないので自分が動揺するかと思っていたが、そんな感情に悩まされることはなかった、曖昧なまま終わった2人の恋はこの日に物語の終わりのページを書き終えた。
ある日の午後に蓮は佳奈からのメッセージを貰った。
「会って話したいことがある」
その日の蓮は家庭教師のバイトが1件入っていたが、夕方には終わる、その後で良ければと返信を送った。
付き合っていた頃よく待ち合わせ場所にしていた大型の本屋で蓮と佳奈は会った。
隣りにある綺麗なカフェで向かい会って座り佳奈からの話を待った。
Cafeこもれびとは真逆の新しくて綺麗なその場所は蓮にとって居心地が悪いと感じていた。
佳奈は蓮のことをまだ好きなのだと苦しそうに話した、そしてプロポーズされた時にその事に気がついたと言った。
「俺は今好きになった人がいるんだ、この気持ちを伝えてもいないし、これから伝える勇気もまだないけど今はその気持ちに正直でいたいんだ…だから…」
「そうか…私じゃ無理だった蓮の誕生日を祝ってあげることができる人だといいね」
佳奈はそう言って静かにグラスに手をのばした。
その夜の半分の月は蓮の背中を優しく照らしていた。
そして真理亜に会いたいと思っていた。
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