第17話~満月の不思議~
俺は何度も広夢の夢をみる
2人で行ったいつもの堤防
1人で海に入っていく広夢の後ろ姿を見ている、振り向いて見せる泣きそうな笑顔
俺が叫ぶところで決まって
目が覚める
今朝も同じ夢をみた
そんな日はいつも抜け殻のような自分を持て余す、 闇に埋め尽くされるのを待つだけだ。死にたい自分の膝を抱えて時が過ぎるのを待つことだけが精一杯の抵抗となる
広夢と約束していた小説を書く意味すら分からなくなる日々が続いていた。
広夢が死んでからの自分は嫌いだったし
いつも死にたいと思っていた。
満月の夜には不思議なチカラがあり
過去の記憶や思い出を呼び起こすと、それが悲しい過去なら、思いは増長され心に広がってくる。
その広がった闇に抗うすべはなく、次第に闇に支配されていく。
満月の夜は人の生き死にを左右することを研究されていることを知っていた、子どもが母親の心地よい子宮の中から抜け出してくるのは満潮の時間が多い。
その満潮を引き起こすのは月の引力の不思議なチカラのおかげなのだ。
満月の夜は犯罪や事故を誘い、そして自分の命さえ大切にできない悪魔を誕生させる。
その悪魔を真理亜は振り払ったのだ
自分の中に悪魔を抱えたままで…
部屋に戻り
ベッドに置き去りにしていたスマホを手にとる、高校の友達からだ「誕生日おめでとう蓮 ちゃんと生きてるか?」
故郷を離れてからほとんど会っていないけど、その日だけは連絡を取り合う
蓮の誕生日と広夢の命日は皆にとって忘れることは出来ない、それはきっと死ぬまで続いていくのだろうと思ってる。
LINEにメッセージを入れてる時に着信の
通知が入る
大学に入ってすぐに付き合い始めて半年前に別れた「吉澤 佳奈」だった。
「佳奈どうした?」
「何度も電話したんだよ!だって誕生日じゃん」
「ごめん…てか俺たちそんな仲じゃないだろ?」
「それはそうだけど、蓮が心配だったんだよ…」
「心配してくれてたんだ、でも大丈夫…生きてるし」
佳奈は蓮と別れてから、大学で講師をしている30歳の杉本先生と付き合っていた。
「うん、よかった誕生日おめでとう」
「おう…とりあえずありがとな」
佳奈と蓮は約2年間付き合っていた、お互いの部屋を行き来して何度も2人で朝を迎えた。佳奈が会いたいと言えば夜中でもバイクを飛ばして会いに行く。そんな毎日は楽しかった。
それまでは喧嘩もせずに上手く行ってると思ってた。
ある日の夜に些細なことで喧嘩した2人はお互いに思いを残しながら別れることになる。
講義や実習で一緒になることも多かったけど
何とかやり過ごしていた。
「あのね、 蓮…杉本先生からプロポーズされた」
「そうなんだ、よかったじゃん!先生いい人だし、幸せになれるよ…きっと」
俺は佳奈を幸せになんて出来きないと思う
その言葉を佳奈には言わなかった。
「佳奈おめでとう!」
満月の夜は心を乱す、でも2人の恋は終わった……終わったんだ。
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