第15話~Cafeこもれび~
Cafeこもれび
この店の扉を開けただけで何だか落ち着く、全てがゆっくりと流れるようにおもえるのだ。古びたテーブルや椅子、歴史を感じさせる置き物、長い歴史のなかで時の流れと共に人々の思いなどを一緒に刻んで来たからなのだろうか。
「いらっしゃいませ、今宵はお2人お揃いで」
窓際のいつもの席は満月が見える特等席
「今日のご注文は?」
蓮と真理亜は目を合わせる
「もちろんオムライスを2つ、そして僕はアイスコーヒーを…」
「私はアイスミルクティをお願いします」
たったの2回しか会っていないのに古くからの友達のように感じる。
久しぶりのオムライスはやはり美味しくて、しあわせの味がした。
髭のマスターは食器を下げたあとに、唐突に話を始めた。
「この店を作るきっかけはね、フランスに放浪の旅をしていた時に、ステキな店を見つけてね、そんな雰囲気の店をしたいと思ったんだよそしてその時に偶然出会った人と恋をした。」
その女性は日本からの留学生で画家を目指していたそうだ、日本に帰ってからこの小さなCafeを営み、妻となった女性は画家を続けながら女の子を産み育てた。
2年前に病気で他界されたこと、子育てのこと、たくさん話しをしてくれた。
亡くなった奥様と娘さんの話を嬉しそうに話す姿を見てると、奥様は幸せだったのだろうと想像できるくらい愛情にあふれていた。
「女の子は難しいですよ、ころころ気分が変わるから困ったものです」
「もう、パパまたわたしのことを話してる」
カウンターに座って本を読んでいた高校生くらいの女の子が笑いながら会釈をしてくれた
「ごめんなさい、恋人同士の二人をみるとすぐ話しかけちゃうんですよ」
髭のマスターは苦笑いしながら二人に話かけた。
「人と巡り会うというのは不思議なものですよね」
マスターは私が1人で店を訪れたことを1度も話さなかった。
蒼が1人で訪れたことも……
そしてその時に2人ともオムライスを頼まなかったことも…
マスターの見えない心使いに感謝をした。
「おふたりさんの名前を聞いてもいいのかな?」
「はいもちろんです、僕は蒼…町田蒼です」
「私は川上真理亜です」
その夜のCafeこもれびは楽しい笑い声で溢れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます