第14話~蓮と真理亜~再会

 満月の夜がやって来た、ちゃんと約束したわけじゃないのにきっと逢えると信じていた。


 初めて会ったあの日と同じくらいの時間に踏み切りの前に着いた


 遮断機が降りて電車が通り過ぎるのをぼんやり見ていた、毎年何人の人が同じような気持ちで電車を眺めているのだろう。


 毎日のように

 自分自身を殺す人がいる


 そして一度でも死にたいと思ったことのある人はその勇気に羨望さえ覚える


 人はいつか死ぬ

 それを自分で終わらせて何が悪い?

 そう思ってしまうのだ

 あの日の私だってそう思って此処にきたのだから、そして彼に出会った。

 それは偶然かもしれない、でも巡り会う運命だったのかもしれない


小説の中の蒼のセリフを思い出していた。

「広夢は僕の誕生日に死を選んだとしか思えなかった、毎年死ぬまでその日に思い出して欲しいから?勝手なことするんじゃねえ、

そんなことしなくてもお前のこと忘れるわけないだろ、なんでだよ!なんで死んだんだよ!」



◇◇◇


「マリアさまこんばんは」


 振り向くと蓮が笑っていた

「今にも飛び込みそうにみえましたけど…」


「それって嫌味ですか?」

 小さく笑いながら真理亜は答えた


 2人は無言のまま通過する電車を何度も見送った、お互いに何を思っているかわからないけど心は共鳴しているのだと感じていた。



 静かに真理亜が口を開いた


「小説続けてくれて嬉しかったです」


「いつも読んでくれてるから書けたのかもしれないんだ、あの物語の蒼は俺自身だと真理亜ちゃんはきっと気づいていただろうね、だから書けたのかもしれない、広夢も実在の人物、そして俺の誕生日に死んだことも全部ほんとうなんだ…」


 かける言葉がみつからなかった、私にはぜったいにわからない感情


「オムライス食べに行こうか?」


 厚い雲に覆われていた満月が雲間から現れて二人を照らしていた。



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