第5話~小説投稿アプリ*カクヨム~
小説を読むのが好きな真理亜はある小説アプリに登録して、暇さえあれば読み漁っていた。お気に入りの作者の小説が投稿されたら読み応援コメントを書くことが趣味になっていた。
真理亜の仕事は小さな弁護士事務所
そこで秘書というのは名ばかりの雑用係をしていた。主な仕事は電話番と裁判所に出す書類などの作成である。
報酬は特別よくもないが、人のよい雇い主(弁護士)の元で平凡なOL生活を送っていた。
「その小説アプリって?」
「カクヨムって言うんだけど知ってる?」
蓮の言葉にびっくりした真理亜は「ペンネームって聞いてもいいかな?」
「ああ…いいよ…【秋山
「知ってるも何も、
【
【
港町に住む5人の高校生の淡い恋や苦悩の物語で、有名なカメラマンの写真を見ているように描写される海辺の景色や優しい言葉で綴られる物語に真理亜は魅了されていたのだ。
週2回の更新をいつも心待ちにしていたのに、この1ヶ月更新が途絶えていて、他の小説サイトに移ったのかなと思っていたので、目の前にいる蓮がその作者だと分かりびっくりして黙ってしまっていた。
「真理亜ちゃん、俺のこと知ってた?あのサイトって凄い数の作品あるんだよ、しかもほとんどが異世界物だし俺の書いた小説を読む人はよっぽど暇人だと思ってるんだけど」
しばらく無言だった真理亜が口を開いた
「暇人ですみません、私…
「咲良っていつもコメントくれるあの咲良さん?」
「そうです、私自身は作品投稿してないし
、いわゆる読み専ですけど」
「え~マジか?毎回投稿する度にすぐにコメントしてくれるし、読み取って欲しい言葉の小さな変化にいつも気づいてくれるから、書いてる上ですごく嬉しかった、ごめん、でも続きかけてないんだ」
「ううん!いいよ、でも蓮くんって才能あると思うよ、ぜったいに」
そこへ店主らしき髭の素敵な男性が現れた
「楽しそうに話してるのにごめんね、そろそろ閉店なんだよ」
慌てて時計を見ると
12時をとっくに過ぎてる
「ごめんなさい12時までですよね」
「片付けがあったから大丈夫だよ、また二人で来て下さいね」
お金を払ったのは蓮だった
優しそうな店主に挨拶して店の外に出た
「私が払います、約束ですから」
「バカだね、俺が奢るからって言ったら一緒に来てくれなかったでしょ?それってナンパみたいだし」
「自殺しようとしてた人はナンパしないだろうし、同じくついて行きませんよ…でも…お言葉に甘えて…ご馳走様でした」
「うん、こちらこそありがとう、とりあえず今夜死ななくて良かったかも、貴重な読者さんに会えたし」
蓮はいたずらを見つかった子どものように笑った
「でも、たくさんフォロワーさんいるじゃないですか?★の数も100超えてるし」
「有難いよね、俺なんかに…でもね…知ってた?レビューコメント書いてくれたのはたった1人…咲良さんなんだ、そして投稿してスグに作品フォローしてくれたのも…」
「恥ずかしいです、初めて書いたレビューコメントだったし、文章下手くそだし、読んだ勢いだけで書いたし…」
「嬉しかったんだ…すごく」
二人はすでに出会っていたこのカクヨムで、
"
「何とか生き延びた二人そろそろ帰りますか」
大通りまで出て二人は別れた、連絡先なんてもちろん聞いていない
蓮の後ろ姿に声を掛けた
「物語の続き書いてくださいね~!待ってますから~!」
小さく手を振り蓮は次の角をまがった
大きな丸い月は二人の影法師が離れていくのを空の上から眺めていた…
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