第4話~蓮~

 オムライスを食べ終えた蓮は重たい口を開いた


「俺さこの近くの医大に通ってる学生、今4回生で今日この満月の日に22歳になった」


 近くにある医大は

 私立大学なのだが、偏差値70くらいはないと入れない名門校である


「あの大学ってすごく入るの難しいんだよね、蓮くんって頭いいんだね、そして誕生日だったんだおめでとう!!」


「ハハ、ありがとう!そんな日に死のうとしてた俺におめでとう…か」


「まぐれだったんだよ大学に入れたのって…偏差値なんていつも60~65位だったからさ完璧にまぐれで入った、それで今現在苦しんでるってことだよ、 毎日勉強ばかりでさ、授業について行くのさえ大変なのに、色々と課題も出るし行き詰まっちゃって…

 俺さ、子どもの頃からなりたいものがあってさ、今頃になって不安になってきたところなんだ」

 蓮は鳥取県の小さな港町で生まれ育った、身体の弱い母親美和子はたった1人で蓮を産み育て愛情を注いでいたのだが、こうげん病を患っていて入退院を繰り返していた、その頃姉の沙都子は子どもが出来ないまま結婚生活を過ごしていた、妹の息子である蓮を養子として迎えたのは蓮が小学校に上がったころ、沙都子の夫である隆志は医師として地元の大きな病院で働いていた。

 何不自由なく育った蓮は、近くにいる病弱な実の母親からもたくさんの愛情を貰っていたので優しい子どもでいられたのだろう。

 蓮が中学生の頃美和子は天国へと旅立った、隆志が内科を開業したのはそれから1年後のこと、隆志は養子である蓮が医者になることを望みはじめた。

 蓮はその頃から医師になることを期待される重たい十字架を背負うことになったのだと感じていた。


 アイスコーヒーの氷をカラカラといわせながら蓮は続けた「物書きになりたかったんだ… ずっと…小さな頃から、自分が作った物語の中で自由に話して恋愛して冒険したりできる小説家になりたいと思っていたことを今さらだけど思い出した……そして生きる意味とか考えてたら…辛くなった」


 真理亜も本が好きでたくさんの本に夢中になっていた

「お医者さまで作家ってたくさんいるじゃない、それって凄いよ」


「俺さ…そんなに器用じゃないんだよ、才能なんてないしさ、でもどうしても書きたくなって小説アプリで下手くそな文章公開したりしてるんだ」


先週のことである、父の隆志からの電話をうけた、「ちゃんと卒業できる位には頑張れよ、お前にどれだけお金が掛かってるか分かってるだろうな」

会う度に言われるこんな言葉にウンザリしていた、そして逃げ出したかった。

好きで医大に入ったわけではないのだから…


『結局死のうとする弱いやつなんだ』


そう話した蓮の瞳には、同じ思いを抱く真理亜と同じようなかげりりを感じた。





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