第3話~真理亜~

 真理亜は恋人に二股を掛けられていた事、その恋人との結婚を考えていた事、元々不安定な状態で診療内科に掛かっていた事



 すべてを初対面の蓮に話した


「今日の午前中にね、カウンセリングを受けたの、死にたい気持ちを話した、そしたらね、ドクターは優しい口調で生きることの素晴らしさを伝えてくるんだけど…ますます死にたいとおもっちゃったの」


「そしてあの踏み切りに来たら、町田くん……蓮くんがそこにいたってわけ」



「お待たせしました」

 美味しそうなオムライスを持って店員さんがやって来た20歳くらいの可愛い女性


「今日のオムライスは特別美味しいと思いますよ」優しく笑いながら店員さんは二人の前に出来たてのオムライスを置いた。



 大きなお皿に乗ったオムライスと小さなサラダ

 アイスコーヒーとアイスカフェオレも一緒にテーブルに置かれた。

 ふわふわの卵の上はクリームとデミグラス2つのソースで彩られていた。


「とりあえず食べよ」

 蓮は真理亜に声を掛けた


 美味しい…ふわふわの卵にケチャップライス


 何度も恋人にオムライスを作った、でもなぜだかケチャップライスが上手く作れないのだ、いつもベタつくし簡単そうでなかなか難しい料理なのだと思う

 文句も言わずに食べて、美味しいとさえ言ってくれた拓斗を思い出した…

 ほんの少しだけ…胸が傷んだ


 どうしたらこのお店のようなオムライスが作れるんだろう?


 さっきまで死にたいと思っていた自分が可笑しくなってふと笑ってしまった。


「何か面白いことでも思い出したの?」

 蓮は優しく笑いながら声をかけてきた


「ううん何でもない、美味しいね、最高に美味しいよ」


 店の中には優しい時間が流れていて、聴こえてくるフランス語の囁くような曲を聴きながらアイスカフェオレを飲んでいると、さっきの踏み切りでの出来事は夢の中のことだったのかと思えてきた


 でも…確かなことは…蓮と真理亜、二人とも本気で死ぬことを考えていたんだという現実があったということ。


生きているのはこんなにたやすいもので

温かいものなのだろうか?

優しい時間はどうしてこんなにも気持ちを落ち着けてくれるのだろうか?


 自分が微塵も有用ではない人間であるということを根底に置いて生きてきた

 どうしてそこまで自分を軽んじるのかさえ分からなくなっていたのだけど、この満月の夜の出来事は私にとって生きて行くきっかけになるのかな?とぼんやり思ってた





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