飼う

 男を飼うとはどんなものだろうか。

 そう思ったので、私は男を飼うことにした。

 最近数少ない友人らが口を揃えて「男を飼っている」と言うのだ。男を飼うというのはそんなにも楽しいものなのだろうか。私のまだ知らない愉しみだ。私は男を飼ったことがない。ならば私も飼ってみればいいのではないだろうか、と思いついたのが一昨日のことだった。

 大抵は一晩眠れば水が引くように落ち着く私の突発的な願望、欲望、好奇心は、珍しく今日に至るまで持続している。ある夕方にふと「カレーが食べたい」と思って、それを数日間引き摺り続けてしまうように、私は男を飼いたいと思い続けている。それどころか時計の針が一回りするごとに、メールを一つ返すごとに、食事をするごとに、その欲望はむくむくと膨らんでゆくのだ。いけない。このままでは破裂してしまう。私は男を飼いたくて、飼いたくて、そのせいで風船のように破裂して雲のように霧散してしまう。それはいけない。男を飼わなければ。

 きっとそれは楽しいものに違いないのだ。何せ友人らの口端に、眦に、薄くなった頬紅に、卑屈さを軍旗のように掲げるくせして、けれど隠しきれない優越がぷんぷんと臭っているのだ。男を飼うとそういう顔をしなければならないだろうか。それは少々面倒だけれど、それでも私の好奇心はその面倒さえも乗り越えて叫んでいる。

 男を飼うとはどんなものだろうか。

 ああ、男を飼ってみたい。

 そして飽きたら捨てればいい。だって人間だもの。犬猫と違って、そう簡単に死にはしないから、大丈夫。

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