ドッペルドッペル

 ねえ聞いてくださいまし、私貴方とそっくりな顔を持った子と親友なのよ、会ったことおありかしら? 私がそこの喫茶店でレモンティーを頼んでそれを待っている間だけ親友はやってくるの、するりと向かいのソファへ滑り込んで備え付けのマッチを一本一本手折っては灰皿に捨てていくのよ、勿体ないこと。そして肘をついて、こう、腕を立ててね、顔の前に手首を持ってきてね、その陰から私を見てにぃやりと笑うの、少し吊った形の目を狐みたいに細めてね。私はそれを浴びる度に尻から炙られた蝋燭のようにどろっと溶けてこのソファのカバーへ滲み込んでいってしまう気がするのだわ。あの子もう見ないのだけれど死んでしまったのかしら。貴方ご存知ないかしら、だって同じお顔ですもの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る