誰が、何故
「それにしても……メリル、なんで一人で戦おうとしたんですかって怒らないんだな」
「怒られたいのですか?」
「いや。ただ、珍しいなと思ってな」
正直、勝手な判断だと思ってた。
俺がメインになって戦うのはまだしも、せっかくセルシアが紫電崩牙を装備してるんだから、その辺をしっかり考えて動けば良かったと、ちょっと後悔してる。
「……私たちが動いたところで、ラガス坊ちゃまの邪魔になる可能性の方が高いです。確実にサポート出来るのであればまだしも、最悪の場合、盾として扱われていたかもしれません」
「悔しいっすけど、メリルの言う通りっすよ。途中までなら、部分部分でサポート出来てたと思うんすけど、生命力を燃やし始めてから? のあいつは、マジで化け物でした」
「私も、サポート、する、前に……やられた、かもしれない、と思う」
…………全員悔しいって気持ちが体から零れてる。
……悔しさを感じてるっていうのが解ると、それはそれでメリルたちのことが頼もしく感じるな。
「ルーフェイスにラガス坊ちゃまをサポートしてほしいという気持ちはありましたが……」
「イレックスコボルトっていうAランクモンスターが実際に居た訳だからな。仕方ないってやつだ」
エスエールさんたちが遭遇した、Aランククラスの実力を持つキマイラ。
そして、実際に出会ってしまったAランクのモンスター、イレックスコボルト。
クソヤバい怪物が二体も確認出来た。
となれば、他にもAランクのモンスターが潜んでいると考えるのが当然だ。
ある程度の知能を持ってるモンスターなら、容易に漁夫の利を得ようという発想に至るだろうからな。
「ルーフェイス、今回もありがとな」
『いつでも頼ってね!!!』
「あぁ、ありがとう」
どうやら、ルーフェイスにも少し心配かけてしまったみたいだ。
接近戦に自信がないわけじゃないんだけどな…………あれから無我夢中で戦ったけど、勝てたのは運が良かったからだろうな。
もう一度戦って勝てるかって訊かれたら、勝てるとは答えられない。
「そういえばさ、結局コボルトやその上位種を殺して一部食らってた犯人は、多分あのイレックスコボルトだよな」
「そうですね」
「えっ!? そうなんか? 俺はてっきりあのデカいリザードかと思ってたが」
「死体があった場所から、二体が戦っていた場所まで、それなりに距離がありました。しかし、血痕らしい血痕は殆どなかった」
メリルの言う通り、確かにポツンポツンと不等間隔ではあるけど、血は一応零れてた。
あの光景を思い出す限り、イレックスコボルトと大きなリザードが戦いながら動いたとは考えづらい。
「ん~~~、そうだったような、そうじゃなかった様な……でもよ、何で同じコボルトどうしで殺し合ったんだ?」
その気持ちは良く解る。
良~~~~~く解るぞ、シュラ。
イレックスていう言葉があるのかどうかは知らないけど、レックスって言葉は……確かキングと同じで、王って意味だよな。
「仮にあのイレックスコボルトという上位種が、あのコボルトたちのリーダーであれば、謀反を起こされたのかもしれませんね」
「謀反っつーと……下剋上、ってやつか?」
「その認識で良いかと。部下たちが下剋上をしてくれば、トップとして殺すのも致し方なかったと考えるべきでしょう。勿論、仮定の話ではありますけど」
「そんな事があったら…………つっても、全員ぶっ殺すか? モンスターの心とかプライドとかは知らねぇけど、一体か二体殺されれば、その下剋上だーーーーー!!! って気持ちも収まるんじゃないか?」
「一度裏切られれば、二度と信用しない。そういった考えを持っている個体だったのかもしれませんよ」
「…………それもそうか」
メリルの方が有力かもしれない。
その後、料理の準備が終わってからも、メリルたちとイレックスコボルトというAランクモンスターについて話し合い続けた。
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