どっちも解る

「どうだ、メリル。注文通りだろ」


「えぇ。お二人とも、私の我儘を聞いていただきありがとうございます」


「んじゃ、さっさと解体しちゃおうか」


いつも通り、俺とメリルが中心となってポイズンセンチネルの解体をスタート。


「にしてもあれっすね。昆虫系のモンスター……あれ? 百足って昆虫でしたっけ?」


「百足は…………一応、昆虫の部類で合ってるんじゃないか」


前世で虫博士という訳でもなかったので、細かい生態とかまでは解らない。


「そうっすよね。それで、昆虫のモンスターって、なんであんなにしぶといんすかね。頭? を斬られたり貫かれたりしても動いてるのは、別に生き残ろうとする執念とか、絶対に相手を殺す、道連れにしてやるってタイプの執念からくる動きじゃないっすよね」


「俺もそう、思うよ。そもそも他のモンスターとかと違って、昆虫系のモンスターはあまり感情がないからな」


「……私としてましては、脳がないから……と思っています」


「おいおいメリル、それマジか?」


「あくまで私個人の考えよ。私たち人間、コボルトやリザードマンなどにある一般的な脳と認識している物がない。役割を果たす器官の様な物はあるでしょうけど……主に体を動かす力しかないんじゃないかしら?」


そういえば、人間と虫では神経? に違いがあるんだったっけ。


脳の作りが違うことで、感情がないのかもしれないな。


「ほ~~~~ん?」


「……シュラ、あなた絶対に解ってないでしょう」


「おぅ。お前ほどそんな細かく考えてないからな。ただ、何となくでも理由? 理屈? を知れてたら、まだ納得出来るからな」


「…………何にモヤモヤしていたのかは知らないけど、納得して解消されたなら良かったわ」


シュラには、単純に気持ち悪さがあったんだろうな。


俺にも良く解らない部分はある。

感情とかが無かったとしても、戦力差が解ればダンジョンで生まれたモンスターじゃないんだから、逃走って選択肢もあるはず。


なのに、昆虫系モンスターは戦闘が始まれば、全く逃げようとしないからな。


「……蜂は、別?」


「蜂系のモンスターは……そうだな、あれはまたちょっと別なのかもしれないな」


「加えて、蟻系のモンスターも別枠かもしれませんね」


そうか、蟻もあったな。

蜂と蟻には女王がいるし、働きアリとかもいるから…………いや、でもそれは少なからず感情があるというよりも、生まれた時から役割があるから、戦う以外の選択肢も取れるのか?


「まっ、俺らがそこまで考えても仕方ないよな~~~」


「…………これだから脳筋は」


「んだよ。脳みそまで筋肉になって戦うのは気分が良いぞ」


…………シュラの気持ちも解るけど、正直メリルの気持ちも解るかな。


確かに俺たちは学者じゃなくてハンターだから、どうすればモンスターを倒せるか、どうすれば目的の素材を傷付けずに倒せるかとか、そういう事を考えるだけで良い。


でも、割とモンスターの謎? とかを考えて話し合うのも楽しいんだよな……まぁ、俺が珍しいタイプってだけか。


「ラガス坊ちゃま、どう思いますか。この男の考え方」


「俺はメリルの解らない部分に関して話し合う楽しさも解るし、シュラの頭空っぽにして筋肉を思いっきりぶつけて戦う楽しさも解るから、どっちの味方も出来ないな」


「そうですか……であれば、仕方ないですね」


納得してくれたようでなによりだ。


そして丁寧に素早く解体をして約十分、二体のポイズンセンチネルの解体が終了。


「……まっ、そういう事になってもおかしくないよな」


アイテムバッグに売れる素材などをしまい終えて周囲を見渡すと、数体程ゴーレムが転がっていた。


「ラガス坊ちゃま、あれはもう丸ごとギルドに売ってしまっても良いのではないですか」


「その方が良さそうだな」


幸いにも、俺とメリルが解体中にシュラたちが討伐したゴーレム系のモンスターは、全てCランク以下。

解体はギルドの解体士たちに任せるとしよう。

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