イっちゃってる?

「ところでラガス坊ちゃま、結局地下遺跡には一切入らないのですか?」


がっつり寝た翌朝、いつも通りハンターギルドで適当な依頼を受けてから未開拓地へ出発。


探索を始めてから約一時間後に、数体のブロウタイガーが襲ってきたが、シュラとメリルが二人だけで仕留め終え……周囲に死体が転がっている。


「地下遺跡なぁ…………一回も探索しないのは、やっぱりちょっと勿体ないよな」


エスエールさんの言う通り、絶対に戦争が起きると決まった訳じゃない。

勿論頭の片隅に置き続けるのは大事だけど……それで俺のハンター人生を縛ってしまうのもなぁ…………うん、よろしくないな。


「別の場所に行く前に、一度探索してみるか」


「分かりました。ですが、本当に一度だけですか?」


「うっ…………それは断言出来ないな」


「そうでしょうね。もしかしたら三日五日、それ以上探索することになるかもしれませんし、探索の前にしっかり準備しましょう」


「そうだな」


エスエールさんたちトップクラスのクランが短い期間とはいえ、全力で探索してマッピングして……探求者以外のクランがマッピングした地図を合わせても、十分の一……もしくはそれ以下かもしれない。


そう考えると、やっぱりワクワク感が、探索欲が湧いてくるな~~。


「おっ、やっぱり探索するんすね」


「一応そうしようと思ってる。必要以上に身構えすぎてた」


つっても、個人的には仕方ないと思ってしまう。

だって……他国のクソマッドサイエンティストが、うちの国であんな事やってたんだぞ。


誰だって焦っちまう。

俺なんてまだまだガキだしな。


「地下遺跡、探索……物凄く、楽しみ、だね」


「ふふ、そうだなセルシア」


「ワゥ!!!!」


「ルーフェイスも楽しみか。ダンジョンに近いタイプみたいだし、ある程度暴れられると思うぞ」


つっても、ダンジョンと違って出現するモンスターの強さがランダム。

ダンジョン以上に……緊張感がありそうだ。


「ガァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」


「「「「「っ!?」」」」」


まだブロウタイガーの解体が終わってない。

強いモンスターが来るのは良いことだけど、ちょっとタイミングが悪いなぁ……オーガ。


「ラガス、私が、戦っても良い、よね?」


「…………っ。いや、ダメだ」


「? なん、で???」


「攻撃するなら、遠距離でだ。なるべく、全員で攻撃するぞ」


「ルガァアアアアアアッ!!!!!!」


オーガ……見た目は確かにオーガだ。

体色は赤い。どこかで拾ったのか、それとも探索していたハンターを殺して奪ったのか知らないが、ランク三か四の大剣を持っている。


「っ!!?? ラガス、さん! こいつ、半端ないパワーっすね!!!!」


「そうだな……大分、見る限り……イっちゃってるな」


全身の血管が浮き出てる。

加えて、眼が血走っている。

涎が垂れ流れてるのに、一切気にせず大剣を振るってる。


暴走してるとか、狂暴になるアビリティを使ってるとか……そういうのじゃ、ない?


「ラガス坊ちゃま、あれはいったい何なのでしょうか」


「解らん。解らんが……とりあえず普通じゃない」


未開拓地に生息してるオーガだから、って訳じゃないのは間違いないだろうな。


凶暴性が増してるというより、誰かに操られてる?


「ガァアアアッ!!!!」


「っ!!!??? いやいや、やっぱりちょっとおかし過ぎるだろ」


オーガが振り下ろした大剣は、誰にも当たらなかったが、地面を斬り裂きやがった。


未開拓地に生息してる通常種のオーガでも、絶対に出来ない芸当だ。


「ラガス坊ちゃま……どうやら、あの個体。痛みを感じてないようですね」


「それは、俺も思った」


パーティーの中で遠距離攻撃が得意なのは俺とメリルだが、シュラとセルシア、ルーフェイスも遠距離は出来る。


割と避けられたりしてるけど、それでも数の有利もあってオーガは全ての攻撃は躱せてない。

ただ、全くパフォーマンスは落ちないし、傷が治るのも早い。


狼竜眼で視たが、再生や高速回復のアビリティとかは持ってなかった。


「……とりあえず、あいつの体を刻む」


「かしこまりました」


亜空間から狼牙瞬雷を取り出し……冷静に、抜刀するタイミングを見計らう。

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