諦めてはいない

「……ちょっと、待ってください。Bランクモンスターを殺せるモンスターって、それって……」


「同じBランクモンスターか、Aランクモンスターだろうな」


普通に考えれば、そうなる。


Cランクモンスターが下剋上を繰り返してるって可能性もあるかもしれないけど、それなら既に下剋上を繰り返した成果で、Bランクに……上位の存在に進化してそうだな。


「え、Aランク、モンスター」


「どうした、ヴェルデ。顔が青すぎるぞ。ほら、エールでも呑め」


「……シュラさんは、その……恐ろしさを、感じないんですか?」


「何がだ? 自分と同じBランクモンスターを殺してるモンスターか? それとも、Aランクモンスターか?」


「…………両方、です」


「別に恐ろしくはないな」


シュラの即答に、訳が解らな過ぎてちょっと面白い顔になるヴェルデ。


ヴェルデの立場になってみれば……どういう顔をしてみるのか解らなくなるかもな。


「同ランクのモンスターを殺せるBランクのモンスターなら、是非とも俺が戦いたい。実力的には、おそらくファイルトロールぐらいか? って考えると、増々戦ってみたいな」


「え、Aランクのモンスターは、恐ろしくないのですか」


「クソ強い存在なのは、さすがに解ってる。けど、一度も見たことがないわけじゃない。ほら、俺たちが探索したダンジョンの話をしただろ…………したよな、ラガスさん?」


「あぁ、この前したと思うぞ」


「ほっ、良かった~~。その時、最下層のボス部屋にはAランクのモンスターがいたって話はしただろ」


「そ、そういえば……」


懐かしい、って言うほど昔の話ではないな。


ハイ・ヴァンパイア……確かにあいつは強かった。


「ラガスさんと、ルーフェイスはソロで殺られる。今はまだラガスさんたちの力を頼っててダサぇが、それでもパーティーに討伐出来る人がいるんだ。そこまで恐れる必要はないだろ」


「それは、そうですね」


「だろ。まっ、そこまで強くなるのを諦めた訳じゃないがな。まずはあれだ、メリルとセルシア様の三人でぶっ潰せるのが目標だ。なっ!!」


「そんな話しましたか?」


「しなかったか?」


「記憶にありませんが……ですが、良い目標ではあると思います」


今のシュラとメリル、セルシアの三人でも…………いや、誰か殺られる可能性がゼロとは言えないか。


「セルシア様はどう思われますか」


「うん、良い目標、だと思う、よ。私も、紫電を、使わずとも、勝てるようになりたい、かな」


Aランクモンスターとの戦闘でこそ、紫電崩牙を使わないといけないと思うんだが……まっ、そういう気持ちは解らなくはない。


「って感じで、別に恐れる必要はない。というか、別にマジでAランクモンスターが徘徊してるって決まった訳じゃないぞ」


「そ、そうでしたね。早とちりしたと言いますか……違いますね、俺が勝手にビビっただけでした」


「おいおいヴェルデ、変に悩むなよ。ぶっちゃけ、俺もAランクモンスターがって思ったら、普通にビビったぞ」


「私もですね」


「Aランクモンスターって、まだあまりピンとこないけど、別次元の存在的な恐ろしさはあるよね~~」


……良いパーティーだな。

レグディス、ファールナ、フィーマの三人が折れかかったヴェルデのメンタルを直ぐに支えた。


この三人が直ぐに支えなかったら、もしかしたらだけど、せっかくBランクモンスターに遭遇できたとしても、どこかのタイミングでヴェルデがヘマしたかもしれない。


それでも、早とちりしてしまったからではなく、勝手に自分がビビっただけって認められてる時点で優秀な事に変わりはないよな…………でも、本当にAランクモンスターと遭遇してしまったら、ちゃんと俺たちで対処しないとな。


さすがにあのレベルのモンスターに本気で殺しに掛かられたら、勉強の良い機会云々言ってられないし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る