思考の切り替え
「「「「…………」」」」
「まっ、こういう時もある。今日は探索したエリアが悪かったな」
残念ながら、丁度良い個体どころか、Bランクモンスターと遭遇することなく一日が終了した。
「そうそう。別に、これまでも毎日Bランクモンスターと遭遇してた訳じゃねぇだろ」
「シュラさん……いや、それはそうなんだけどよ。なんつーか、今日はマジで戦る気満々だったんだよ」
……今日という日が終わってしまったからといって、レグディスが言っていた逃したら駄目な機会ってやつを、逃してしまった訳じゃないよな?
「残念ではあるかもしれませんが、ラガス坊ちゃまの言う通り、こういった時もあります」
「……あると、思う、かな」
メリルとセルシアも慰めるが、四人ともガチで落ち込んだまま。
「落ち込み過ぎだぞ、お前ら。特にレグディス、お前今日念願のブロウタイガーと戦れて勝ったじゃないか」
Cランクモンスターの中でも特に四肢が発達しており、移動速度と爪撃が半端ではない虎。
未開拓地に生息してるブロウタイガーということもあって、爪撃の攻撃力だけならBランクに届く可能性があるモンスターだ。
「いや、それはそうなんだけどよ……やっぱ、本命はBランクモンスターだったからよ~~~」
一進一退の攻防をしてたのによ……とはいえ、ブロウタイガーと遭遇したタイミングはそろそろ街に戻ろうかと思った時だったしな。
レグディス的にも、今じゃねぇんだよ!!!!! ってツッコミたいタイミングでの遭遇だったか。
「……では、思考を切り替えましょう」
「思考を、ですか?」
「えぇ、そうです。今日は確かに目当てのBランクモンスターと遭遇出来ませんでした。しかし、仮にBランクモンスターと遭遇でき、戦闘に発展した……にもかかわらず、途中でアクシデントが起きてそのBランクモンスターに逃げられてしまった……そういった可能性もあったのです」
あぁ~~~、なるほど。そういう納得のさせ方か。
理屈は……解らなくもないってところかな。
「今日、遭遇は出来ませんでしたが、もしかしたらあと一歩のところまで逃がしてしまう。そういった形の不運が起こった可能性もあるのです」
「な、なるほ……ど??? いや、でも遭遇出来なかったことには変わりねぇし」
「ですので、その不運が最悪の形で起こったかもしれない可能性を防いだのです」
「…………なんとなく、分かった」
解らない、というよりまだちょっと納得がいかないって顔だな。
フィーマもレグディスと似た様な顔。
ヴェルデとファールナは、一応メリルの言いたい事は解るって感じか。
「ですので、そこまで落ち込む必要はないかと」
「……そうだなぁ。確かに、メリルさんの言う通り、最悪の不運って訳ではないか」
「確かに最悪ではなかったけどさ~~、次はちゃんと遭遇できるかな~~~」
「次は探索するエリアを変えてみよう。だからって絶対に遭遇できる保証はないが、十日ぐらい探索してれば遭遇出来るだろ」
「十日となると……約二十日間、ですか」
探索して休息を取って、探索して休息を取ってってスケジュールを考えれば、最大それぐらいの日数がかかるかもな。
「は、二十日間…………」
「ヴェルデ、最大日数の話だ。明後日には遭遇してるかもしれないだろ」
「なぁ、ラガスさん。連続で探索したら駄目なのか」
「……出来なくはないが、お前らBランクモンスターと戦って勝ちたいんだろ。それなら、一日探索した後はしっかり休め。特にレグディス、お前は今日ブロウタイガーと戦っただろ。辛勝とは言わないけど、それなりに削れはしただろ」
「それはそうだけどよぉ」
「前日の疲れの影響で、それこそ折角のチャンスを逃しても良いのか?」
「っ………………分かったよ。ちゃんと休みを取るよ」
言うことを聞いてくれるようでなによりだ。
連日探索が当たり前な俺たちが言っても説得力はないと思ってたけど、良かった良かった。
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