どれが相手なら

「………難しい顔をしてるな、ラガスさん」


「そうか? ……そうだろうな」


レグディスと千鳥足になっていたヴェルデを宿の近くまで送り届けた後、帰り道であいつらが戦うのに丁度良いモンスターについて考えていた。


「もしかしなくても、レグディスの奴がBランクのモンスターに挑みたいって話を、悩んでるんすか?」


「あいつらの上に挑みたいって気持ち自体は悩んでないよ。ただ、どういったモンスターなら、あいつらが戦うのに丁度良いかって考えててさ」


「丁度良い、Bランクモンスター、か……なぁ、ラガスさん」


「なんだ?」


「Bランクモンスターってさ、どいつもこいつも強いんっすよ」


……酔いで頬を赤くしながら、当たり前の事を言われた。


本当に当たり前の事なんだが、そうだな。

多少の相性はあれど、Bランクモンスターはどいつもこいつも強い。


未開拓の地に生息してるモンスターなら、尚更だ。


「そうだな。どいつもこいつも強いな……けど、少しぐらいは考えておきたいと思ってな」


「相変わらず、ラガスさんはお人好しっすね」


「あの四人が、変わらず生意気でツンツンした態度を取ってたら、ここまで考えないよ。シュラだって、そう思わないか?」


「思わなくは……ないっすね」


「だろ」


「うっす。でも、あいつらも強さ的には、一応一人前のハンター? なんすから、あまりそこまで考え過ぎるのもあれじゃないんっすか」


シュラの言いたい事は解る。

解るけど……指導者? として見てるって考えると、やっぱりあいつらもハンターだからと言って、死なせたくない。


ていうか、仮に四人のうち誰か一人でも死んだら……やっぱり後が面倒だ。


「あれですよ、探求者のトップのエスエールさんも、あいつらのうち誰かが死んだとしても、それはそれでハンターらしいって納得するんじゃないっすかね」


「トップである以上、あまり過保護には出来ず、特別視も出来ない、か…………なら、俺はあいつらよりも強いハンターとして、守れる範囲は守ってやりたい。それを頑張るよ」


「……ラガスさんが頑張るんだったら、俺もちゃんと頑張らないと駄目っすねぇ」


「ありがとな。それで話は戻るけど、どういったBランクモンスターが良いと思う」


「俺らが丁度良いって思えるモンスターに巡り合えるかどうかは解らないっすけど、やっぱ人型のモンスターとかはあいつらも戦りやすいんじゃないっすかね」


人型のモンスターか。


ムキムキゴリマッチョなステロイドリザードマンとか、刺青コボルトの上位種とかそこら辺か。


「リザードマン、コボルト……まだ俺達は遭遇してないけど、オークのBランク個体もいるだろうな。けど……避けられるなら、状態異常系の攻撃が使えるモンスターは避けたいな」


「確かにそうっすね。あいつらがBランクモンスターを自分たちの力だけで倒すって目標に対して、どれだけ金を使えるかにもよりますけど、未開拓地に生息するモンスターの毒とかはどうにかするってなると、割と良い値段のマジックアイテムが必要になるからな~~」


「だな。そこも気にしつつって感じで……とりあえず人型のモンスターと遭遇出来たらって感じか」


マジックアイテムの素材自体は、未開拓地で採れるから割と良い品が多いと思うけど……まっ、パーティーの財産管理はヴェルデかファールナがしてるだろうから、そこに関しては心配する必要はないか。


「はぁ~~~~~~」


「どうした、急にそんな大きなため息を吐いて」


「いやぁ~~。だって、せっかくBランクモンスターと戦える機会をあいつらに譲らないといけないと思うと……言っちゃあれっすけど、テンションが落ちるじゃないっすか」


「ふっふっふ、シュラらしいな。そこは指導料に良い金貰ってるんだから、一回ぐらい我慢しようぜ」


本当にシュラらしい理由だが、未開拓地で探索をしてれば、いくらでも退屈しない相手と戦えるさ。

レグディス達の指導期間が終わっても、まだカルパで探索を続けるからな。

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