そこは隠すだろう
「ラガス達も探索するんだろ?」
「ん~~~~…………気にはなりますけど、今すぐ探索しようとは思ってません」
「? どうしてだ。もしかして、実家……もしくはパートナーの方の実家から呼び出しでもくらってるのか?」
「いえいえ、そういう訳ではありません」
別にうちの実家とセルシアの実家も、こまめに顔を見せろとか言ってくるほど子離れしてないわけではない。
手紙さえ送ってれば特に問題はない。
「そうか。ならなんでだ? お前ほどのハンターなら、当然血が騒ぐだろ」
「気になりはしますが、俺たちは未開拓地に興味があってカルパに訪れました」
「……つまり、おそらく地中にあるであろう遺跡だけに集中しなくても良い、ってことか」
「そういう事です」
気になるという言葉に嘘はない。
ハンターにとって、やはり未知というの非常に刺激が強いスパイス。
でも、あんまり集中し過ぎるとな……。
「それに、個人的には気になることもあるので」
「その気になることってのは、俺に教えてくれたりするか?」
「……事になれば、自然とエスエールさんの耳にも入ってくると思います。現時点で俺が言えることは、備えておいて損はない、ですね」
「備えておいて損はない、か……貴族には貴族の悩みがあるってのは解ってたけどよ、まだガキなのにラガスも苦労してるな」
苦労、か。
そこまで苦に捉えてはいないけど……確かに面倒事ではあるよな。
「大組織のトップに立つエスエールさんと比べれば、大した苦労じゃないですよ」
「大組織のトップ、なぁ…………なぁラガス。お前さ、今すぐ俺が立ってる様な立場になれるとしたら、なりたいか?」
「いえ、全くなりたくありません」
「だよな~~~~」
……これはどう見ても、クランのトップに立ったことを後悔してる感じか?
「ガキの頃は、こういう立場に立ってる先輩たちがカッコ良く見えたんだけどなぁ」
「カッコ良いのは、その通りなのでは? だからこそレグディスたちはエスエールさんを尊敬してる訳ですし」
「そいつは嬉しいんだよ……うん、そこは俗物的だが、俺が求めてた姿でもある。けどなぁ……普通さ、こんなに忙しいって思わなくねぇか?」
こんな愚痴を零すってことは、地中に未知の遺跡があるかもしれない……でも、本当にクランのトップであるエスエールさんたちは探索に向かえるかは分からないんだな。
「俺は貴族の令息なので、なんとなく人の上に立つ人は色々と忙しいんだろうなとは思ってましたけど、そういう立場ではない者がハンターになれば、確かにクランという立場のトップに立っているからといって、その忙しさまでは透けて見えないかと」
「だよな~~~」
「……辞めたい、と言わない辺り、当然とは思いますが重要性も解ってるんですね」
「そりゃ元はバカ寄りだけどよ、もう……十年ぐらいか? それぐらいトップに立ってあれこれやってりゃな。先輩たちも、トップに立ったら立ったで色々と忙しいって教えてくれりゃ良いのによ」
「逆に教えないものなのではないすか? ほら、誰かを勧誘する時って、先に良いところだけじゃなくて、こういう汚くて辛い部分もありますよ~みたいな事は教えないじゃないですか」
「そいつはそうだな。ハンターになっても、直ぐに詩みてぇな活躍を出来るわけじゃねぇからな」
随分とこう……しみじみとした顔を浮かべるな。
エスエールさんはエスエールさんで、クランマスターになるまでに、それなりに泥にまみれてきたってことなのかな。
「最初からそういった部分を伝えてたら、捕まえられる人材も捕まえられなくなります。だから、エスエールさんも自分の後継者を探すときは、性に合わないかもしれないですけど、そこら辺は隠して……上手い言葉を使った方が良いかと」
「……ここでラガスをスカウトってのは、やっぱりなしか?」
「光栄ですけど、再度丁重に断らせていただきます」
順当にいくと……あれよこれよと持ち上げられるのは、レグディスになるかもな。
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