戦闘だけは
「っ……参り、ました」
「うん、お疲れ、さま」
圧巻の勝利だったな。
あの人族……ヴェルデの剣筋も悪くないんだけど、まだ経験が足りないって感じか？
それを伝えたら、自分よりも歳下であるセルシアに経験不足で負けたなんて納得出来ない、って言いそうだな。
「終わった、よ」
「おぅ、お疲れ様。どうだった？」
「悪くは、なかった、かな？ でも、あまりワクワクは、しなかった、かも」
「そうだな。一応ただの試合、模擬戦だからっていうのもあるかもしれないけど……つっても、最後まで雷を使わなかったことを考えれば、それで十分ってことなんだもんな」
「うん。あの状態、なら、多少は、意味がある模擬戦、だったと、思う」
……今の言葉を聞いたら、絶対にキレるだろうな。
いや、さすがにそこまで短気ではないか？ でも、目の前で言ったら……絶対に煽ってるって認識されそうだな。
「それじゃ、最後は俺だな」
「…………」
気合と緊張、十分って顔だな。
「さっきまでと同じで、審判はいない。後でごちゃごちゃ言わない様に戦ってくれ」
「っ……終わる時には、その態度……絶対に崩してやる」
虎人族、獣人族だからか、仲間たちが全敗した状況であっても、戦意は全く衰えてないな。
「オッケー、分かった。それじゃあ実際にちゃんと戦おう」
「おおおおおおぉぉああああああアアアアアアアアアッ！！！！！！」
雄叫びからの全力ダッシュ。
思い切りは良いが、ちょっと一直線過ぎるか？
「っ、ガァアアアアアアアアアアッ！！！！！！」
突きの風切り音からして……当たれば、Cランクモンスターでも痛手になるか？
「ハッ！！！！！」
「よっ、ほっ、っと、せい！！！！」
「な、めるなッ！！！！！！！」
「全く、嘗めてないぞ」
多少は俺の情報を集めてたってことか？
確かに一切魔弾を使ってないけど、さすがにトップクランのマスターから面倒を見てくれ？ って頼まれた人物を相手に、トラウマを植え付けるのは良くないしな。
四人同時に相手にするならともかく……うん、俺としてもセルシアと同じく、この状態が一番やり易いな。
「ぬぅああああああああッ！！！！」
「アビリティの連続しよう、か。悪くないんじゃ、ないかな」
「っ！！！！？？？？」
「ほら、油断しない」
「ごはっ！！！！？？？？」
手刀からの内臓殺し、多分コンビネーションの……五連続か？ そんで最後に通常よりも更に踏み込んだ正拳突き。
正拳突きを最後に持ってきたのはナイス判断だった。
というか、最初は力任せの猛撃だったのに、途中でアビリティ技の連続使用を行う……相手がこの……レグティスのことを何も知らない同格のハンターが相手なら、今の連撃で決まってたかもな。
「結構頭使えるんだな」
「っ、余裕ぶってられんのも、今のうちだッ！！！！！！！」
掌底を腹に当てたのに、まだ随分と動けるな。
身体強化のアビリティしか使ってないとはいえ……タフさは鬼人族のフィーマに迫る感じか。
とはいえ、アビリティの連続使用……あれ以上の攻撃があるのか？
いや、あそこまで体技のアビリティの練度があるなら、発勁は使えるか。
でもあれは正拳突きと似た様な技だから、しっかりと俺の体勢を崩してくれないとあれなんだが……出来るのか？
「シッ！！！！！」
「っ、っと。なるほどなるほどな」
「チッ！！！！！」
大きい舌打ちだな。
直情型……試合最初にそのイメージを与えてから、アビリティ技の連続使用に、途中で魔力の斬撃刃を爪で飛ばす、か。
四人の中でリーダー？ みたいな感じだったし、自然と頭が回るようになった……もしくは、元々頭が回るタイプだったのか。
…………元々頭が回るタイプだったら、俺たちに対して喧嘩腰にならないか。
「っ、破ッ！！！！！！！」
「っ！？ なるほど、それが使えるから自信満々だったんだな」
ここで魔闘気か。
とりあえず、戦闘に関しては本当に頭が回るタイプみたいだな。
今のはちょっと危なかったよ。
んじゃ、俺もちょっと頑張っていこうか。
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