矛盾を保つ視線

「お疲れ様。どうだった、面白い敵はいたか?」


「いや、居なかったっすね。ボスの盗賊だけはちょっと強かったと思うんすけど……ギアが上がってきたタイミングだったんで、何も考えずに倒しちゃったっす」


「それで良いんですよ、シュラ。そもそもあなたが満足するような屑集団がいれば、こことを通る前に私たちの耳に入っている筈です」


確かに、メリルの言う通りそんな強者が盗賊団に居たら、俺たちの耳に入ってるだろうな。


それからも目的の街に着くまで数回ほど盗賊団に襲われたが、どの盗賊団にもシュラが満足出来るような相手はいなかった。



「……シュラ、なにぶーたれてるんだ?」


「いや、盗賊なんかやってるくせに、根性ない奴が多いなって思って」


「なるほど? ……でも、ある程度根性がある奴なら、盗賊団なんかで楽して生きようって考えずに、真面目に仕事をして働くんじゃないか」


「……確かに!!」


納得いってくれてなによりだ。


とはいえ、盗賊なら根性はなくても度胸はありそうだけどな。


「シュラ、あなたが期待してる様な盗賊団があれば、先に兵士や騎士、ハンターたちが動いてますよ。特に……この街の近くで活動していれば」


それなりに移動し続け、ようやく未開拓の場所が多い森の最寄り街、カルパに到着。


「はは、確かにそうだろうな」


現在街中に入るために列に並んでるが……ちらほらと並ではない同業者の姿が見える。


調べた感じ、ここには国外のハンターにも人気らしい。

まぁ……個人的には国外のハンターが良い具合に開拓出来たら、面倒なことが起きそうだけど……領主としても、国際問題に発展したくないから、下手に遮れないんだろうな。


「いやぁ~~~、超ワクワクしてきたっす」


「おいおいシュラ、森に入るわけじゃないんだぞ」


「勿論それは解ってるっすよ。でも、なんかこう……ワクワクしてこないっすか?」


……俺の場合はワクワクよりも、ドキドキの方が大きいかな。


「ラガス坊ちゃまは、あなたが他の同業者と問題を起こさないかドキドキしてるのですよ。悪い意味で」


メリルさ~~~ん。そんなにストレートに言わなくても良いですよ~~~~。


「いやいや、俺だけじゃなくてメリルだってキレるときはキレるだろ。てか、俺から喧嘩を売ることはねぇし……つか、そういう時って大抵メリルの方が濃密で鋭い怒気を放ってるぜ」


「何を言ってるのですか。確かに怒りはしますが、そんな視線だけ人を殺せるような眼は向けていませんよ」


濃密で鋭い、か……この四人の中だと、メリルの怒った視線が一番その矛盾を達成してそうだな。


「はいはい、そんな事で喧嘩するなって」


「ラガス坊ちゃま、別にシュラに遠慮する必要はないのですよ」


「別にそんなつもりはないし…………なんなら、俺はやり始めたらメリルの方が恐ろしいと思ってるぞ」


「っ!!!!!?????」


おいおい、なんでそんな驚き心外満載な顔してるんだよ。


もしかして、自分の一番得意な武器を忘れてるのか?


「そりゃないとは思ってるけど、完全にキレたら相手が人間であっても関係無しに毒を使うだろ」


「っ……そ、そんな事、ありませんよ」


「珍しくちょっと面白い顔になってるぞ」


毒を与えるだけじゃなくて、解毒も出来るのは知ってるけど……個人的に、ハンター同士のいざこざで毒を使ったら、結構アウトな気がするんだよな……別に父さんや母さんからそういう話を聞いたわけではないけども。


「まっ、そもそも腕の立つハンターやそのほかの戦闘者なら、ルーフェイスの強さに気付いて変な絡み方はしないだろ」


『どんな奴が来ても、僕が噛み千切って追い払うよ!!!!!』


……ルーフェイス、そのやる気は本当に嬉しいんだけども、噛み千切るのは止めてくれ。

追い払うどころか……大多数の人がその場で息絶えてしまうから。

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