この世界では我儘?

「相変わらず、俺たちはオークが塩胡椒を背負ってる様に見えるみたいだな」


「……直ぐに調理が出来る美味い肉状態、ということですか?」


「そんな感じだ」


鴨が葱を背負ってじゃ伝わらないだろう。

この世界だと、オークが塩胡椒を持ってるって感じだろ。


「んじゃ、アジトの場所を吐いてもらうか」


そう、俺たちはさっきまで盗賊の襲撃を受けてた。

盗賊たち的には、巨狼と鬼人族の男をなんとかすれば殺れるって思ってたのかな?


「ガキが、俺たちを、倒したからって良い気に「あぁ~~~もう、そういうのは良いから、さっさと吐いてくれ」っ!!!???」


「ほらほら、お願いだから面倒な手間をかけさせないでくれ」


小さいサイズの魔弾を撃ち、大きくはないが、小さくもないダメージを与える。


「あっ、ポーションとか使わずに回復させる手段はあるから、頑張って耐えても無駄だから」


って宣言したけど、本当に回復弾を使うまで粘った。


……これだけの根性があるなら、ハンターとして活動してもそれなりに上手くやれたと思うんだけどな~。

冒険や仕事の途中で死ぬか否かは別だけど。


「ま、待て!!!! しゃ、喋っただろ!!!!」


「あれだね。あんたらは本当に面白い具合に考えが同じなんだな。これまで散々人を殺しておいたのに、なんで自分は助かると思ってるんだよ」


別にアジトの場所を教えれば、生かしてやるとも約束してない。

こいつを一ミリも生かす理由はない。


「ラガス坊ちゃま、アジトは私とシュラだけで潰してきますので、少々お待ちください」


「えっ、あぁ……解った」


答える前に言っちまったよ。

まぁ、別に面白そうな奴がいるとは思えないし、ここで二人が帰ってくるのを待っていても良いか。


「ねぇ、ラガス」


「ん? なんだ、セルシア」


「カルパ、では……楽しめ、そう?」


「そりゃあ、楽しめると思うぞ。なんせ、全て開拓されている場所じゃないんだからな」


カルパの領主からすれば、開拓して定期的に珍しい果実や薬草、モンスターの素材を手に入れられる様になったら最高なんだろうけど……現時点だと、もしもの事があったらっていう恐怖の方が大きいだろうな。


つっても、俺らはその開拓に付き合うんじゃなくて、ただ冒険するだけなんだけどな。


「未知の場所、なんだよ、ね」


「そうだな。これまでに出会ったことがないモンスターと戦えると思うぞ」


「……それは、凄い、楽しみ、だね」


学生時代、長期休みにはちょいちょい遠出してモンスターと戦ってたけど、全てのモンスターと戦うのは到底無理。

行ける範囲も限られてるしな。


「でも……また、面倒な、人たちと、会う?」


「会うというか……残念ながら、向こうから絡んでくることはあるだろうな」


ハンターギルドの中に入ったら、ルーフェイスは外で待機だからな~。


シュラがいるけど……はぁ~~~。

俺がもうちょい厳つい見た目だったらな~。


「……ラガスは、それで、良いと思う、よ」


「…………顔に出てたか?」


「うん」


即答かよ。

セルシアがそう言ってくれるのは嬉しいけど……個人的に、筋トレとかそれなりにやってるんだから、もうちょい

こう……ゴリゴリとは言わないけど、細マッチョの一個上ぐらいの体になってほしい。


「はは、そうか。つっても、嘗められのが好きなわけじゃないからな……出来れば、普通に接してほしいんだけどな」


今回みたいな一件があったから、それが難しいのは解ってる。


ただ……それならそれで、既にスタートから一年経たずにルビーランクまで上がってるんだから、そこにビビッてちょっと恐れててほしい。


「ベテラン? の人たちは、割と、良い感じ? な気が、する」


「クランとか大きい組織に属したりしてないベテランの人たちは、結構余裕があるみたいだからな。年齢が年齢だからか、変なライバル心もないしな…………まっ、世間一般的に見れば、俺のこの考えは我儘に入るのかもな」


普通に接してくれると嬉しいってのが我儘ってのはおかしいかもだけど、ここは前世と違うからな……割り切るしかないんだろうな~。


なんていつも悩んでることは悩み続けてる間に、二人が始末を終えて戻って来た。

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