轢かないように
「ワゥ!!!!」
「ここか! ……?」
ルーフェイスが止まった場所は岩壁の前。
しかし、目の前にはただ岩壁があるだけで、洞窟の様にはなっていない……ってか、そもそも岩の大きさから考えて、洞窟ができるほどの大きさがない。
「ラガス坊ちゃま、もしかしたら何か仕掛けられているのかもしれません」
「……穴が幻影で塞がれてる様子はない、な。…………殴れば、何か起こるかもな」
シュラに指でちょいちょいっと動かして指示を出すと、直ぐに俺の意図を理解してくれた。
「全く、お二人は本当に……セルシア様、ルーフェイス。直ぐに突入の準備をしておきましょう」
「分かった」
「ワゥ!!」
ふふ、本当に皆頼りになる仲間だな。
「ふぅーーーー……いくぞっ!!!」
「うっす!!!!」
俺は普段使用している強化アビリティに加え、魔闘気を纏い、コングアームを発動。
そしておそらく、シュラも同じような感じに身体能力を強化して、鬼火を纏った気合の乗ったストレートをぶっ放す。
すると……俺たちが放った拳はスカった。
そう……一瞬、ほんの一瞬だけ何かに触れたって感覚はあったが、殆ど何かに触れた感覚がしなかった。
その代わりに? 目の前の岩肌が徐々に変化していき、端っこの方から破裂音が聞こえた。
「うおっ!? えっと……刺すタイプの、マジックアイテムか?」
「ラガス坊ちゃま! 考察は後です!!!」
「お、おぅ!!」
メリルにさっさと中に入るぞと急かされるが、言われた通りだ。
もしかしなくても、この地中に続く道に居るであろう誰かが、俺たちの侵入に気付くのも時間の問題。
というか、もう気付いてるかもしれない。
ルーフェイスの背中に乗って全力ダッシュ。
目指す場所は生物の気配がする方向。
「ッ!! 斬る!!!」
言葉は少ないが、ルーフェイスに伝わったと信じたい。
狼牙瞬雷を抜刀し、目の前の壁を切断。
このまま突進してもルーフェイスは難無く蹴破ると思うが、蹴破って飛んでいった扉がタコキメラの黒幕であろう人物を潰してしまっては駄目だ。
そんな俺の思いはどうやら伝わったらしく、ルーフェイスは切断された鋼鉄の扉を踏んで、サーフィンの様に滑る。
「ッ!!?? な、なんだお前たちは!!!!?????」
部屋の中には一人の学者がいた。
「ハンターだよっ!!!」
ルーフェイスがサーフィンで轢いてしまうよりも速く動き、襟首を掴んでギリギリ回収に成功。
「さて、とりあえず動くなよ」
「がっ!!??」
用心には用心を重ねて、魔力たっぷりの麻痺弾を撃った。
技術にも力を入れ、首より上は一応動く。
「…………気味の悪い空間ですね」
「どう考えても、このおっさんがタコキメラを造った張本人だな」
二人の言う通り、堅い扉? の奥の空間は研究室となっており、数体のキメラがカプセルの中に閉じ込められていた。
少々近未来……いや、未来感を感じさせるマジックアイテムだが、マジックアイテムだからこそって目の前の光景に納得出来る部分がある。
「ッ!!!??? お、お前たち! 私の現最高傑作を倒したというのか!!!!!」
「あんたの現最高傑作を倒したからこそ、今こうしてあんたを捕らえることが出来たんだよ、マッドサイエンティスト」
これは偏見なんかじゃない。
人工的なキメラを造ろうなんて人間は、まともじゃないんだよ。
闇魔法のアビリティを使う魔法使いが、ゴーストやスケルトン系のモンスターを使役するのとは訳が違う。
こいつは間違いなく、まともな人間じゃない。
本気で悪い方向に狂っている害虫だ。
「ふ、ふざけるな!!!! お前たちがクソガキ如きが、私の現最高傑作のキメラを倒せる訳がないだろ!!!!」
「好き勝手にほざくのは別に構わない。でもな……自分の立場を良く理解した方が良い」
「がっ!!」
とりあえず、反応が鬱陶しかったので魔弾を死なない程度に打ち込む。
「あんたの命は俺らが握ってるんだ。言葉は慎重に選んだ方が、懸命だと思うぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます