確かにキメラはいるが

「……本当にここで一戦始めるわけないでしょう。全く」


「んだよ、つまんねぇな」


「そういう問題ではありません。本当にあなたは……とりあえず、今はこのタコについて考えるべきですね」


「メリルの言う通りだな」


陸地で移動するタコのモンスター……それ自体は、探せばいるのかもしれない。

てか、モンスターっていう摩訶不思議な存在のことを考えれば、そういった常識を打ち破るようなモンスターが存在してもおかしくないだろう。


ただ……ここまで色々と混ざったタコは、まず自然界のモンスターじゃないだろうな。


「誰かが、造った、っていう、こと?」


「キメラって言うモンスター自体は存在するが……これはどう見ても、その派生にあたるモンスターではないと思う」


「私も同意見です。とはいえ、私が扱っていた毒が通じたところを見ると、完全なゴーレムの類ではなさそうかと」


「そうなるだろうな」


ゴーレム系のモンスターは厄介なことに、毒液や毒霧などが殆ど効かない。

まっ、その分スピードに欠けるから戦り辛い相手ではないんだけどもな。


「誰かが造ったタコモンスターがベースのキメラ、ねぇ……頭が中々イカれた錬金術師なら、造れなくはないんすよね」


「頭がイカれてる人ほど、異常に優れた才を持って、尚且つ執念が凄いらしいからな」


別にそんな人物に会ったことはない。

会ったことはないけど、異世界だからこそ前世よりそういった人種がそこそこ多い気がするんだよな。


「……そも、そも。禁止、だったはず……と、思う」


「ん? そうだったけ」


「完全なゴーレムであればともかく、考える意思を持つモンスター擬き、キメラなどは基本的に禁忌の領域に近い内容ですね」


俺が造ったコンバットドールとかは全然大丈夫だけど、目の前のタコキメラとかは完全にアウトってことか……そもそもなんで、このタコキメラがホープレス周辺に現れたのかも謎だけどな。


「……とりあえず、こいつの死体は解体せずに確保しておくとして、これは国とか騎士団の方に報告した方が良い案件、か?」


「俺らで解決しちゃダメなんすか?」


「近畿の領域に足を踏み入れ、制作したキメラがハンターたちに危害を与えていたとなれば、大きな問題であることに変わりません」


「ふ~~~~ん……けどよ、ここ数か月の間でタコキメラがどこからか出現したって情報は聞かなかったよな」


シュラの言う通り、タコキメラがホープレス周辺に現れ、ハンターたちを襲う様になってから一か月も経ってない。


「そうですね。あのタコキメラの目撃情報が上がったのは、本当にここ最近の話です」


「そうなるとよ……どう考えても、ホープレスの街中……もしくは周辺のどこかからか、タコキメラが放出されたことになるよな」


「……そう考えるのが、自然ですね」


「てことはよ、あんまり国や騎士団に報告して任せてたら、タコキメラを造って放出した本人は、何処かに逃げちまうんじゃねぇか」


……シュラにしては、超まともな発言だな。

別にいつもふざけてるって言ってる訳じゃないんだが……一理どころから、十理ある流れだ。


「つまり、今これから私たちだけでタコキメラを放出した人物を探し出し、捉えるのが一番ベストな選択と」


「って事だ!! 珍しく良いこと言ってね?」


「色々と自覚してるんですね……逃げられるぐらいなら、私たちで少し無理しても捉えた方が良いという意見には賛成ですね」


「っしゃ!!!!」


はいはい、解ってる解ってる。

解ってるからそんなにキラキラした目でこっち見なくても大丈夫だから。


「けどなぁ……そういう話になると、完全にルーフェイスの力に頼ることになるんだよな」


チラッと相棒の方に顔を向けると、人の言葉を完全に理解出来る狼竜は嬉しそうに吠えた。


そんな相棒の姿に苦笑いし、先程しまったタコキメラを取り出した。

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