頭ではなく本能
それなりに良い宿に泊まり、リフレッシュ後……翌日からは早速仕事を始める。
ハンターギルドに向かい、適当な討伐依頼を一つ受理してもらい、先日受付嬢から聞いた情報の元へ向かう。
朝ということもあってハンターの数は多く、何人かのハンターは俺たちに鋭い視線を向けていた。
つっても、視線の主たちは先日シュラとメリルが捻じ伏せたルーキーや、おそらく先日の一件を耳にしたであろう、同じルーキーたち。
エメラルドランク以上であろう人たちは……様子見、こっちを値踏みするような視線だったな。
「実力差も解らない愚か者たちが、いったい誰に向かってあのような視線を……」
ハンターギルドから出た直後、急にぶつぶつと小言を喋り出すメリル。
ぱっと見呪詛を呟いてるようで恐ろしいが、俺のことを思って心の声が漏れてしまっているというのは解ってるので、特に咎めない。
「なんつ~か、用があるなら普通に話しかけて来れば良いのにって感じっすね」
「用があっても、二人には自分たちが束になっても構わないから、離れた場所から睨みつけることだけしか出来ないんだろ」
「でも、そこまでこう……イライラな感情があるなら、模擬戦でも吹っ掛けてぶん殴ろうと意気込みません?」
シュラの言葉に一理なくはないが、意外にも昨日絡んできたチンピラハンターたちは、体験した内容を夢やまぐれだったと否定するようなお花畑連中ではなかったってことだ。
「ちゃんと今すぐ再戦を挑んだところで、ぶっ飛ばされるって解ってるんだろ」
「……そこまで考えられる頭持ってたんすね、あいつら」
物凄い失礼なこと言ってるが、そう思ってしまうのも奴らの言動とか態度を考えれば、解らなくもない。
「今回に限っては考える頭を持っていたってより、本能がそう判断したんじゃないか」
「あり得、そう」
おっと、セルシアさんも珍しく同意発現。
「まっ、本能とはいえそういう判断が出来るんだったら、街の外で警戒する必要はないだろ」
警戒するのはモンスターと山賊だけで良い。
いつも通りの感覚でいこう……ってな感じで森の中に入って約一時間。
アイアンランクの冒険者が受けられる討伐依頼の素材は、あっさりとゲット出来てしまった。
「当然と言えば当然ですね」
「簡単、過ぎる、ね」
いや、本当にお二人のおっしゃる通り。
こっからが本当の目的ではあるんだけど、それでもあっさり終わり過ぎたな。
今度からは、もう一つか二つ同時に依頼を受けるのもありか?
「しかし、ギルド内にはそれなりに戦える方々が多く居ました……それでもまだファイルトロールを討伐出来ていないことを考えると、ラガス坊ちゃまがロウレット公爵様に教えていただいた情報通りのことが起こっているのかもしれませんね」
ファイルトロールが群れをつくってるパターンか。
そもそもトロールが群れをつくって行動するのが珍しいんだが……ファイルトロールには、もしかしたら同種を引き寄せるフェロモン、もしくはカリスマ性などがあるのかもな。
「群れをつくってるってことか。ははッ! それは最高じゃねぇか」
「シュラにとってはそうでしょうね」
「んだよ、メリルだってなんだかんだ言って、自分の力を試せる実験台がいればワクワクするだろ」
「……そうですね。今回に限っては、良い実験台になるかと」
おぉ~~、珍しくメリルがシュラの言葉を認めた。
「ねぇ、ラガス。あそこ」
「ん? なん、だ…………ちょっと珍しい光景、だな」
セルシアが指さす方向には、体中にそこそこの傷を負ったオーガが三体ほどいた。
三体のオーガが、負けるほどの強敵がいるってことだよな。
今ノールスに集まっているハンターの質を考えれば、俺たち以外のハンターが追い詰めたって可能性はありそうだが。
「ッ! ガァアアアアアアアアアッ!!!!」
三体を追い詰めた存在が何なのか考えていたら、俺たちの存在に気付き、問答無用で襲い掛かってきた。
いや元気かよ!
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