無限ループになるぞ

後日、セルシアは再度二人の気持ちを確かめた。


当然と言えば当然だが……二人の気持ちは依然として変わらなかった。

そんな二人の対応に、セルシアはそれ以上苦言を呈することなく、受け入れた。


「私たちのせい、なのでしょうか」


その日の夜、俺の部屋に訪れたメリルとシュラは、やや暗い表情をしていた。


「俺はそんなことはないと思う。てか、絶対にキリアさんとルーンからも、決してあなた達のせいじゃないから、変に気にしないでください、って言われただろう」


「ラガス坊ちゃま……いつの間に心を読む力を?」


「お前らじゃないんだから、そんな力ないっての」


顔の表情だけで、ある程度考えてることまで解るわけないだろ。


でも……今回起こった件の内容や、キリアさんとルーンの性格を考えれば、予想出来なくはない内容だ。


「あの二人だって、メリルとシュラとそこそこ付き合いが長いんだ。お前たちがもしかしたら自分たちのせいで、なんて少しでも考えてるってお見通しだったんだろ」


「……今日はやけに色々と鋭いじゃないですか」


「今日のお前ら、特にメリルは顔に出てるからな」


いつものすまし顔はどこにいったんだ、ってぐらい暗いからな。

まぁ、それはシュラも同じか。


「シュラ、お前もだ」


「う、うっす」


「いつまで経ってもそんな顔じゃ、キリアさんとルーンの方が私たちのせいで二人にあんな顔をさせてしまった……って、無限ループ状態になるぞ」


「「うっ」」


いや、マジで冗談抜きでお互い悪いと思ってる状態だから、その気になればマジで無限ループになる。


「というか、二人の意思というか考えは、あながち間違ってはいないだろ」


「「……」」


「おい、答えてくれよ」


冷静に考えてみると……確かに、パーティーを組めば現時点では弱点になっちゃうんだよな。


二人の才能を考えれば、今よりも上を目指せるのは解ってる。

何度も模擬戦してるし、その力は感じ取れてる。


でも……それがいつ、どのタイミングでメリルやシュラほど強くなるのか分からないんだよな。


卒業してからの予定としては、基本的にモンスターとの戦闘メインで動くなら、Bランク以上のモンスターを狙う。

だから、二人が卒業後、直ぐにBランクモンスターが相手でも……二人セットでなら、相手を出来るぐらいの実力がないと、正直厳しい。


セルシアを万が一から守るための実力が足りないというよりも、二人が単純に強敵と遭遇できた場合、一番死ぬ可能性が高いんだよ。

二人が死ぬのは、当然俺としても嫌と言うか不本意というか……とりあえず泣く。

そんで、セルシアはもっと泣く。


その点を考えると……いや、本当は嫌だよ。俺だって嫌だけど、現実的に考えると賛成せざるを得ない。


「でもさ、例えばメリルとシュラのタッグで、キリアさんとルーンのタッグと戦って……お前ら負けるか?」


「いえ、負けません」


「負けないっす」


きゅ、急に真面目な表情になるな。


これに関しては、俺が一年生の頃からずっと証明されてる。

普段の模擬戦でも……従者だけのトーナメント戦はタイマン勝負ではあるけど、そこでも証明されている。


二人が一般的な戦闘者よりも優れたアビリティや特性を持ってるからってのもあるけど……キリアさんとルーンがこのまま成長出来たとしても、二人が更に成長するという現実は変えられない。


「そうだろ。正直……タッグ戦とかになってしまうと、俺の見立てでは百回戦っても百回お前たちが勝つと思ってる……何度も言うが、その強さが原因ではない。寧ろ、任せられると思った要因だろうな」


二人の強さ、優しさを知ってるからこそ、戦場で迷惑を掛けてしまうかもしれない、って思いもあるんだろうな……何かの漫画で、弱さは罪って言葉があった気がするな。


別に罪ではないと思うが、意志や思いを押し通せない原因の一つではある、か。

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