最後に決めるのは自分の意思だ

「私が、別に構わない、って言っても、二人には関係無いん、だよね」


「セルシアの気持ちなんて関係無い、という訳ではないと思うぞ」


二人がそんなこと思ってる訳がない。

セルシアの優しさが、超嬉しいと感じてる筈だ。


ただ、その優しさを感じるからこそ、やっぱり悪い未来ばかりが頭に浮かぶのかもな。


「でも……俺たちがこれから行く場所はさ、とりあえず強いモンスターがいる場所って決めてるだろ」


「うん。そう、だね」


ハンター登録は、王都で済ませようと考えている。

その後は、その日までに決めて置く予定の場所に移動して、目的のモンスターを狩ったり、ダンジョンを探索する。


当然だが、弱いモンスターを標的にすることは殆どない。


絶対に強敵と対峙する時が、遠くない内に訪れる。

俺やメリル、シュラにルーフェイスだって超強い。


そんな強さを持つ俺たちでも……状況が状況であれば、絶対にセルシアの危機に駆け付けられるとは限らない。

それがどんな形で、嬉々として現れるのか……二人としては、自分たちが原因って考えてるんだろうな・


だからこそ、迷惑を掛けてしまう前に、離れたいと決めた。

ある意味逃げの選択かもしれないが、そのプレッシャーを考えれば、解らない話でもない、か。


「いつか、後悔してもしたりない自責の念に潰されるかもしれない。そのイメージが頭から離れないんだよ、多分な」


「それは……心の、病?」


「いや、それはその、どうだろうな? もしかしたら、そうかもしれないけど」


二人は決して弱くない。

戦力は同世代の中でもトップクラス。


なのに……セルシアを守り切れる自信を持てない。

そもそもセルシアが二人よりも強いってのが、一つの原因かもしれないけど、これに関しては絶対に言わない方が良いだろうな。


「でも、仮に心の病だとして、治ったところで戻ってくるかは分からない」


「………………自分勝手、だから?」


「セルシアはそう思わなくとも、本人たちがそう思うだろうな」


今は付いて行けない。

でも、力を蓄えて……隣に立つに相応しい力を得てから、もう一度隣に立ちたいってのは、確かに虫のいい話だ思ってる筈だ。


俺としては、全然戻ってきてもらっても良いんだけどな。

けど、二人の目にはもう俺たちの元に戻らない、覚悟を感じた。


つい最近……どこかで見た目だ。

俺が何度お前は卑怯者にならいと伝えても、修羅の茨の道を進むと決めた男と、同じ目をしている・


「私の、言葉は、もう届かないって、ことなのかな」


「心の奥底まで届いてる。それだけは断言出来る。そんなセルシアの優しさよりも……優先したい何かがあるんだと、俺は思う」


「…………」


口に出した言葉は、当然と言えば当然なのだが、全部俺の考えだ。


本当はセルシアの優しさよりも、別のセルシア以外のことに関して優先したいことがあるのかもしれない。


だとしても、二人がこれから進もうとしている道を、少なくとも俺は止められない。


「俺の口から言えるのは、二人の意思は非常に強い。正直……その気持ちを優先させた方が良い、かもしれない。その可能性も頭に入れておかなければダメだと思う」


「別の、幸せの……形」


「ハンター生活では見つからない、そういう部分を見つけられるかもしれないな」


俺としては、二人の意見を尊重した方が良い……と、六割方思っている。


ただ、二人がいなくなったらいなくなったらで、いつまでかは分からないが、寂しくなる期間はあると思う。


ハンターは出会いと別れを繰り返す職業なんだから、あんまりそこら辺に関してうだうだしてられなくはあるんだけどな。


「俺が伝えられるのは、ここまで。後は自分が、セルシア自身がどうしたいのか、じっくり考えると良い」


「私が、どうしたいか」


「そうだ。これに関しては……いや、これ以外でもそうだが、絶対にセルシアの考えを持って決めるべき内容だ」


当たり前の様な言葉ではあるが、今のセルシアには真剣な表情で、ストレートな言葉が一番伝わると思った。

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