卒業までの暇つぶし

結局オークションであまり金を使うことはなかったが、それでも多少は使用し、欲しい物を手に入れた。


ただ、高品質な鉱石が手に入れば、高品質なモンスターの素材が欲しくなるもの。

品質の釣り合いが取れてないと、良質な魔靴は造れない。


つっても、一応まだ学生。

まだ受ける授業、定期試験も残ってるから、延泊は不可能。


王都周辺で面白いモンスターが出現するって話はあまり聞かないし……そんな奴が現れても、現役のハンターや騎士が何とかする。

俺やセルシアでもなんとか出来るかもだけど、現役ハンターの仕事を奪うのは少々気が引ける。


「難しい、顔、して、どうした、の?」


「この前行ったオークションで、高品質な鉱石を手に入れられたから、どうせなら同等レベルぐらいの素材が欲しいとな思ってな」


「……久しぶりに、強い奴と、戦いたい、ね」


そういう気持ちもあるな。

最後にセルシアと満足した狩りを行ったのは……いつだ?


多分……国際大会が始まる前だよな。


「そうだな~~。まっ、卒業まで待つしかないか」


前々から卒業したらハンターになると宣言していたが、最後まで騎士団のお偉いさん達から、是非とも騎士団に入団しないかというお誘いがあった。


嬉しいことには嬉しいんだが、今更変えるつもりは毛頭ない。


卒業すれば、即ハンターになってセルシアたちと一緒に、強そうなモンスターを倒しまくる旅が始まる。

ダンジョン探索も非常に楽しみだ。


「どうも、この間ぶりですね」


「こ、こんにちわ」


オークションから数週間後の休日、いつも通り鍛錬後の昼食を食べていると、先日の合宿でお世話になった二日酔い有望新人騎士さんがやって来た。


「リアルス団長の方から、是非とも二人が卒業するまで、騎士団に遊びに来てほしいとのことです」


「遊びに……えっと、他の騎士団員の方たちと、模擬戦をしてほしいということですか?」


「簡単に言うと、その通りですね」


それは遊びにという言葉に当てはまるのか?

というか、そういうのって普通は騎士団への入団を志望しているジークみたいな連中が招待される内容だと思うんだが。


「今日みたいな休日とか、平日学校が終わった時間に向かえば良い……ってことで良いんですよね」


「はい、そうです。リアルス団長は、いつでも来てくれて構わない。寧ろ、毎日来てほしいと話していました」


「そ、そうなんですね」


光栄だが、さすがに毎日は無理。

一定ペースで魔靴の製造依頼が来てるからな。


でも、騎士団の強い人たちとタダで模擬戦が出来るのは非常に有難い。


「それでは、早速明日向かいますか?」


「そうだな」


翌日、朝食を食べ終えた後、直ぐに先日伝えられた場所へと向かう。

すると、直ぐに騎士の一人が現れ、訓練場まで案内してくれた。


「ラガスさんたちが来てくれるという事で、他の騎士たちは非常に闘争心が滾っていますよ」


「楽しみですね」


変に構えることなく、見下すこともなく闘争心が滾っている状態。

それが俺たちにとって一番有難いよ。


下に見られのは別に構わないけど、そういう相手は基本的に普段通りの実力を発揮できないというか……邪魔な感情が原因でベストパフォーマンスを出せないしな。


「こちらです」


訓練場に到着すると、既に大勢の騎士たちが素振りやシャドーを行い、活気にがある。


そういえば、カロウス兄さんも騎士だよな。

ここには……あっ、確か遊撃部隊の騎士だから、あまり王都には滞在してないんだったな。


「おっ、早速来てくれたか、お前ら!!!」


「どうも、この間ぶりですね」


「だな。いや~、お前らが大会で超活躍してくれたお陰で、あのバカの間抜け面が見れて最高だった!! マジでありがとよ!!!!」


「ど。どういたしまして?」


何のことだかあまり解らないけど、とりあえず嬉しいことがあったんだな。


「んじゃ、軽く体を動かしたら、早速模擬戦に入ろうか!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る